2019年12月31日火曜日

辰吉丈一郎(Tatsuyoshi Joichiro)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

浪速のジョー、辰吉。岡部繁戦、アブラハム・トーレス戦、グレグ・リチャードソン戦を紹介します。

辰吉丈一郎(Tatsuyoshi Joichiro)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

辰吉丈一郎(日本)                               
身長164cm:オーソドックス(右構え)

辰吉丈一郎 4R KO 岡部繁
(日本バンタム級タイトル戦、1990年)
辰吉:左ジャブ、右ストレート、左フック
岡部:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
4R:右ストレート、連打、左ボディフックで3度、岡部がダウン
(感想:辰吉がタイトル獲得。岡山県倉敷市出身の辰吉。中学を卒業し、大阪帝拳ジムに入門。アマチュアでは全日本社会人選手権バンタム級優勝の実績。プロ入り前からその実力が話題に。プロでは三戦目でWBCインター王者(バンタム級)サミュエル・デュランをKO。そして、この四戦目。王者の岡部もまたエリート。1987年度全日本バンタム級新人王獲得。実力者のクラッシャー三浦を破り、日本バンタム級王座獲得。これが二度目の防衛戦。キレのあるパンチを打つ両者。しかしながら、「当てるテクニック」と「身体全体のパワー」に差が。攻める辰吉、ジャブと右ストレートで応戦する岡部。4R、左フックからの右ストレートで岡部がダウン。さらに連打でダウン。最後は左ボディでKO。パワーに差があった試合。岡部は良い選手だったが相手が悪かった。辰吉はダウンを奪って「腕をぐるぐる回す」パフォーマンス。実力に「魅せる要素」が加わってきた。)

辰吉丈一郎 10R 引分 アブラハム・トーレス
(バンタム級10回戦、1991年)
辰吉:左ジャブ、右ストレート、左フック
トーレス:左ジャブ、右ストレート、左フック
(感想:これまでアジアの選手と試合をしてきた辰吉。六戦目の相手トーレスはベネズエラの選手で世界ランクにも入っている世界的強豪。ジャブの打ち合い。トーレスはバランスが良く、伸びのあるジャブを巧く当てるが、攻めても攻め込まない。辰吉も打ち返すが、パンチの正確さはトーレスの方が上の印象。辰吉は焦りからか、ゴング後も打つなどエキサイト気味。最終ラウンド終了時、両手を上げて勝利を確信している様子のトーレス。判定は引き分け。ダウンシーンは無し。辰吉は鼻血を出すなど映像では劣勢に見えた。当てるテクニックが上だったにもかかわらず勝てなかったトーレス。もっと攻め込んでおけばよかった。鬼塚に負けたタノムサク・シスボーベーみたいな役どころだった。)        

辰吉丈一郎 11R TKO グレグ・リチャードソン
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1991年)
辰吉:左ジャブ、右ストレート、左フック
リチャードソン:左ジャブと左フック
(感想:辰吉がタイトル獲得。八戦目で世界初挑戦の辰吉。リチャードソンは「フレア(虫のノミ)」という変わったニックネームを持つ男。「スピードはあるが、パンチはない」という評価から付けられた。ただ、長身の実力者ラウル・ペレスに勝利して王座を奪っており、その実力は侮れない。ジャブの打ち合いでスタート。パワーと勢いで上回る辰吉が次第にリチャードソンを追い回す展開に。リチャードソンはフットワークとジャブを使い、7Rには連打をまとめるなどしたが、辰吉はジャブ・左ボディフックで攻め続ける。10R終了間際の連打で足に来たリチャードソン。11R開始のゴングに応じられず、ギブアップ。ダウンシーンは無し。内容は辰吉の圧勝だがリチャードソンのジャブをかなり被弾した。トーレス、リチャードソンのジャブを喰ったせいなのか、この後、辰吉は目を痛め、苦難のボクサー生活に。カムバックしたが、敗北。ダニエル・サラゴサには二連敗。WBC王座を取り戻したが、ウィラポンに壮絶なKO負け。「王座を取り戻すまでは辞められない」とのことで、現在も現役続行中。)

①「Japan Bantamweight Title
Okabe Shigeru vs. Tatsuyoshi Joichiro」
②「Bantamweight
Tatsuyoshi Joichiro vs. Abraham Torres」
③「WBC World Bantamweight Title
Greg Richardson vs. Tatsuyoshi Joichiro」

グレグ・リチャードソン(Greg Richardson)のページ
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シリモンコン・シンワンチャー(Sirimongkol Singwancha)のページ
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ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(Veeraphol Nakhornluang Promotion)のページ

マイケル・モーラー(Michael Moorer)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

サウスポーの強打者、マイケル・モーラー。レスリー・スチュワート戦、アレックス・スチュワート戦、バート・クーパー戦を紹介します。

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マイケル・モーラー(アメリカ)
身長188cm:サウスポー

マイケル・モーラー 8R TKO レスリー・スチュワート
(WBO世界L・ヘビー級タイトル戦、1989年)
モーラー:右ジャブ、左ストレート、左右フック
スチュワート:左ジャブ、連打
(ダウンシーン)
8R:右フック、右ストレートで2度、スチュワートがダウン
(感想:モーラーがタイトル防衛。ニューヨーク・ブルックリン出身のモーラー。アマチュアで活躍。スカウトされデトロイトの「クロンクジム」へ。プロデビュー以来、これまで全勝で全てKO勝ち。ラムジ・ハッサンに勝利した後、WBO世界L・ヘビー級王者に認定され、スチュワート戦は四度目の防衛戦となる。スチュワートはトリニダード・トバゴの黒人選手で、元WBA王者。王座を失った後、ドニー・ラロンデのWBC王座に挑戦してTKO負け、ボビー・チェズに判定負けするなど、勢いのある状況ではないが、そのボクシングセンスは関係者から高く評価されている。どちらが勝ってもおかしくないほどの好選手同士の対戦。ガードを固めながら鋭い右ジャブで攻めるモーラー。スチュワートは距離を取りながら左ジャブ、連打で迎え撃つ。ストレート系のパンチが多いスチュワートに対し、モーラーは攻めが多彩。8R、スチュワートが二度ダウンしてTKO。モーラーがパワーと器用さで勝利。プロボクシングはパンチ力がものをいう、といった感じの結末だった。)

マイケル・モーラー 4R TKO アレックス・スチュワート
(ヘビー級10回戦、1991年)
モーラー:右ジャブ、左ストレート、左右フック
スチュワート:左ジャブ、右ストレート
(ダウンシーン)
1R:右アッパー、左ストレートで2度、スチュワートがダウン
4R:左フックでスチュワートがダウン
(感想:「KOマシーン」同士の一戦。WBO世界L・ヘビー級王座を返上したモーラー。全勝(全KO勝ち)の記録を引っさげてヘビー級に挑戦。スチュワートはイベンダー・ホリフィールドに敗れるまでは全試合KO勝ちだった男。ただ、「剛腕」というタイプではなく、連打して倒すタイプ。マイク・タイソンに1RでKOされるなど、勢いのある状況ではない。1R、モーラーはいつものようにガードを固めて鋭い右ジャブで攻める。スチュワートは左ジャブ、右ストレートで攻めの姿勢。互いにジャブを打ち合うが、パンチのキレはモーラーの方が上。スチュワートが二度のダウン。2R、スチュワートの右ストレートでモーラーは動きが止まってピンチ。4R、右アッパーからの左フックでスチュワートがダウン。立ったが、レフェリーストップ。打たれて危ないシーンも見られたが、モーラーがコンビネーションで豪快なKO勝ち。倒し屋モーラーの魅力が発揮された一戦だった。)

マイケル・モーラー 5R TKO バート・クーパー
(WBO世界ヘビー級王座決定戦、1992年)
モーラー:右ジャブ、左ストレート、左右フック
クーパー:左右フック、アッパー
(ダウンシーン)
1R:連打でモーラーがダウン、右フックでクーパーがダウン
3R:連打でモーラーがダウン
5R:左ストレートでクーパーがダウン
(感想:モーラーが二階級制覇。強打者クーパー。元々はクルーザー級だったが、体格的なハンデを承知でヘビー級で戦うタフ男。1R、左右フック、アッパーで攻めるクーパー。モーラーはガードを固めながら鋭い右ジャブで迎え撃つ。ダウンの応酬。3R、連打でモーラーがダウン。実に積極的なクーパーだが、スタミナが足りないのか勢いが落ちてくる。押され気味ながらもジャブ、フックで冷静にチャンスを待ったモーラーが5Rに右アッパーからの左ストレートでクーパーをダウンさせ、レフェリーストップ。元々はライトヘビーだったモーラー、クルーザーだったクーパーがヘビー級で迫力のある倒し合い。共にいつもエキサイティングな試合をするが、世界ヘビー級王座戦にふさわしい豪快な試合だった。後、モーラーはWBO世界ヘビー級王座を返上。イベンダー・ホリフィールドを判定で下して、WBA・IBF世界ヘビー級王座を獲得したが、古豪ジョージ・フォアマンにまさかのKO負けで王座陥落。魅力的なパワーとあっけない脆さ。華々しく咲いては散っていく花のような選手だった。)

①「WBO World Light Heavyweight Title
Michael Moorer vs. Leslie Stewart」
②「Michael Moorer vs. Alex Stewart」
③「WBO World Heavyweight Title
Michael Moorer vs. Bert Cooper」

レスリー・スチュアート(Leslie Stewart)のページ
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アレックス・スチュワート(Alex Stewart)のページ
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バート・クーパー(Bert Cooper)のページ

マイケル・スピンクス(Michael Spinks)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

L・ヘビー級とヘビー級を制した二冠王、マイケル・スピンクス。マービン・ジョンソン戦、ドワイト・ブラクストン戦、ジェリー・クーニー戦を紹介します。

マイケル・スピンクス(Michael Spinks)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

マイケル・スピンクス(アメリカ)
身長188cm:オーソドックス(右構え)

マイケル・スピンクス 4R KO マービン・ジョンソン
(L・ヘビー級10回戦、1981年)
スピンクス:左ジャブ、連打
ジョンソン:右ジャブ、左右フック
(ダウンシーン)
4R:左アッパーでジョンソンがダウン
(感想:新鋭のスピンクス。ミズーリ州セントルイス出身。モントリオールオリンピック・ミドル級金メダリスト(兄レオンはL・ヘビー級で金メダル。さらにプロではモハメド・アリを破って世界ヘビー級王者に)。プロではこれまで全勝。ジョンソンは2回世界タイトルを獲っているサウスポー。初回から右ジャブ、左右フックで攻め続けたジョンソンだが、4R、絶妙なタイミングの左アッパーを食ってワンパンチKO負け。スピンクスが左ジャブ、連打で応戦しながら、豪快に勝利。世界獲りに大きく前進。)

マイケル・スピンクス 15R 判定 ドワイト・ブラクストン
(WBA・WBC世界L・ヘビー級王座統一戦、1983年)
スピンクス:左ジャブ、右ストレート、左フック
ブラクストン:左ジャブと右フック
(ダウンシーン)
8R:ボディーへの右ストレートでスピンクスがダウン
(感想:スピンクスが王座統一。WBA王座を守り続けるスピンクス。「L・ヘビー級」という階級は昔から「(様々な意味で)ヘビー級より下」「二番手」という扱いをされ、あまり人気がない(個人的には気に入っているが)。WBC王者マシュー・サアド・ムハマドとの統一戦の話もあったスピンクスだが、実現せず。ブラクストンがマシューを破って新王者になったことから話が進み、この統一戦。ブラクストンは元囚人。背は低いが、その分ガッチリしており、タフなことから「岩石男」と呼ばれる。アトランチックシティで行われた試合。身長差のある対決。タフネスにまかせてガンガン突進するブラクストン。しかし、スピンクスは無理に打ち合わず。スピンクスの懐の深さとディフェンスによりブラクストンはパンチを当てさせてもらえず空転。8R、ボディーでスピンクスがダウン。しかし、それまで。15R終了。判定は3-0。エキサイティングな勝ち方ではなかったが、良くも悪くも「スピンクスらしい」試合。決して人気が高いとは言えないL・ヘビー級の好カードなのだから「ブラクストンをぶっ飛ばす」ような試合をして欲しかったところ。スピンクスはバランスを崩してダウンをとられたり、強引だったりして出来が良くなかった印象。しかしながら、もしブラクストンが再起不能なほどの打撃を受けていればその後のホリフィールドとの熱戦も無かっただろうから、この試合はこれで良かったのかも知れない。)

マイケル・スピンクス 5R TKO ジェリー・クーニー
(UBA世界ヘビー級王座決定戦、1987年)
スピンクス:ジャブ、連打
クーニー:左ジャブ、左右フック
(ダウンシーン)
5R:連打、右フックで2度、クーニーがダウン
(感想:L・ヘビーに敵がいなくなったスピンクス。階級を上げ、ヘビー級に挑戦。あの全勝のラリー・ホームズを破ってIBF世界ヘビー級王座獲得。再戦でもホームズに勝利。そして、今となっては伝説の「ヘビー級王座統一トーナメント」。WBA・WBC・IBFのヘビー級の王座を一つにまとめようではないか、という企画。その目玉はマイク・タイソン。IBF王者スピンクスもそのトーナメントに参加し、勝ち進めばタイソンと激突することになっていたが、IBF王座を返上し、トーナメントから「脱出」。ボクシングファンは今でもこのことをよく覚えており、スピンクスのことを「ラリー・ホームズに勝った男」ではなく「マイク・タイソンから逃げた男」と言う人も。そんなスピンクスがトーナメントを離脱してまで戦ったのがジェリー・クーニー。白人選手で、いわゆる「ホワイトホープ」。黒人ばかりが勝つ世界ヘビー級では珍しい期待の白人。しかしながら、ホームズに負けてからは勢いが無い状況。アトランチックシティで行われた「UBA」なる謎の団体の王座を懸けた試合。相手のパワーを警戒するスピンクスがフットワークと連打。左ジャブで圧力をかけるクーニー。体格、パンチの重さではクーニーが勝っており、「クーニーが勝つかも」と思うようなシーン・雰囲気も。しかし、5R、スピンクスが一気に攻める。二度クーニーをダウンさせ、最後はレフェリーストップ。ファンがこの結果をどう思ったかは別にして、スピンクスが連打で快勝。クーニーは体格の劣る相手に「殴り合いのケンカ」で負けた(ちょっと情けない)。その後、結局、タイソンにぶっ飛ばされてしまったスピンクス。しかし、ヘビー級時代のスピンクスは「いつまで勝ち続けるんだろう?」という意味で面白い存在であった。L・ヘビー級ではマネーにならないということで無理してでもヘビー級にチャレンジしたスピンクスは度胸と計算高さを持っているボクサーだった。) 

①「Michael Spinks vs. Marvin Johnson」
②「WBA・WBC World Light Heavyweight Title
Michael Spinks vs. Dwight Braxton」
③「UBA Heavyweight Title
Michael Spinks vs. Gerry Cooney」

マービン・ジョンソン(Marvin Johnson)のページ
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ドワイト・ムハマド・カウィ(Dwight Muhammad Qawi)のページ
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ゲーリー・クーニー(Gerry Cooney)のページ
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マイク・タイソン("Iron" Mike Tyson)のページ

2019年12月30日月曜日

マイケル・ナン(Michael Nunn)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

世界ミドル級、S・ミドル級二冠王。長身サウスポー。カーチス・パーカー戦、フランク・テート戦、スンブ・カランベイ戦、を紹介します。

「セカンド・トゥ・ナン」マイケル・ナン(Michael Nunn)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

マイケル・ナン(アメリカ)
身長185cm:サウスポー

マイケル・ナン 2R KO カーチス・パーカー
(北米ミドル級タイトル戦、1988年)
ナン:右ジャブと左右フック
パーカー:右フック
(ダウンシーン)
2R:左アッパーでパーカーがダウン
(感想:アイオワ州出身のナン。ニックネームが「セカンド・トゥ・ナン」(「並ぶ者ナシ=最強」の意)。84年のロス五輪ではミドル級で出場を目指したが、バージル・ヒルに敗れ、出場ならず。気持ちをすぐに切り替えてプロ転向。連戦連勝。アレックス・ラモスに勝利してカリフォルニア州ミドル級タイトル獲得、ダーネル・ノックスに勝利して北米ミドル級タイトル獲得。パーカー戦は北米タイトルの二度目の防衛戦。パーカーは実力者。見た目の感じがジョー・フレージャーなファイター。前に出るが、ナンの懐の深さに特に何もできず。2R、低い体勢のパーカーにナンがキレイなアッパー、KO。背の高い変則的なサウスポーのナン。世界獲りに一歩前進。)

マイケル・ナン 9R TKO フランク・テート
(IBF世界ミドル級タイトル戦、1988年)
ナン:速い右ジャブと左右フック
テート:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
8R:ボディへの左フックでテートがダウン
(感想:ナンが初の世界タイトル獲得。王者テートは84年のロス五輪ライトミドル級金メダリスト。マイケル・オラジデを決定戦で下してIBF王座獲得。ナンとしては世界王座を奪うだけではなく、自身が金メダリストよりも優れているということを証明したいところ。ナンの手数にやりにくそうなテート。ナンは相手の頭を押さえて打ち反則をとられるなどしたが(7R)、8Rにボディへの左フックでテートをダウンさせ、最後は連打でレフェリーストップ。ナンが手数で勝利。ハグラーのような重厚さには欠けるが、いざとなれば打ち合う度胸のある選手であることを証明。テートは金メダリストにしては器用さに欠けていた。それならばもっと一貫した攻めをすべきだったのでは? という印象が残った。)

マイケル・ナン 1R KO スンブ・カランベイ
(IBF世界ミドル級タイトル戦、1989年)
ナン:右ジャブ、左ストレート、左フック
カランベイ:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
1R:左フックでカランベイがダウン
(感想:ナンがタイトル防衛。カランベイはマイク・マッカラムに勝ったこともある選手で、WBA世界ミドル級王者。IBF王者ナンと注目の王座統一戦、となるはずだったが、この試合の前にカランベイの王座は剥奪された(WBAは統一戦を認めないのが基本)。速い右ジャブと左ストレートで前に出るナン。カランベイはナンの周りを回るように左ジャブと右ストレート。そしてカウンターの左フック。倒れたカランベイ。立てず。実に意外な結末。一撃であっけなく終わってしまった。鮮やかに勝ったナンは「ミドル級ナンバーワン」を証明。この後スーパースターになるはずだったが・・・。)

①「NABF Middleweight Title
Michael Nunn vs. Curtis Parker」
②「IBF World Middleweight Title
Frank Tate vs. Michael Nunn」
③「IBF World Middleweight Title
Michael Nunn vs. Sumbu Kalambay」

カーチス・パーカー(Curtis Parker)のページ
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フランク・テート(Frank Tate)のページ
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スンブ・カランベイ(Sumbu Kalambay)のページ

エロイ・ロハス(Eloy Rojas)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

ベネズエラのハードパンチャー、ロハス。朴永均戦、浅川誠二戦、平仲信敏戦を紹介します。

エロイ・ロハス(Eloy Rojas)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

エロイ・ロハス(ベネズエラ)
身長168cm:オーソドックス(右構え)

エロイ・ロハス 12R 判定 朴永均
(WBA世界フェザー級タイトル戦、1993年)
ロハス:左ジャブ、右ストレート、左フック
平仲:左ジャブと左右フック
(感想:ロハスがタイトル獲得。ベネズエラ・カラカス出身のロハス。アマチュアを経て、プロへ。デビュー以来、KOの山を築き、日本の帝拳ジムとマネージメント契約。東京でも強さを見せ、全勝のまま朴永均の持つWBA世界フェザー級タイトルに挑戦、判定負け。朴は荒っぽい男。ロハスと同じベネズエラのアントニオ・エスパラゴサから王座を奪って王者に。再び韓国で行われた再戦。朴の「手口」をよく知っているロハスが1Rから打って出る。ロハスはボクシングの教科書のようなキレイな打ち方。朴は頭からガチャガチャ突っ込み、ホールドしてパンチを打ち、クリンチしてはラビットパンチを連発する、後ろから殴る、などやりたい放題。乱戦になったが、レフェリーは朴の危険な反則よりもロハスのホールディングの方が許せなかったらしく減点をとる。対戦相手、観客、レフェリーと戦うことになったロハスが最後まで頑張る。判定は2-1。まともなジャッジで良かった、というのが正直なところ。ラフすぎる選手は世界王者にふさわしくない。できればロハスにはKOで勝って欲しかったところ(三度目の対戦も韓国で行われ、ロハスが2-1で勝利)。朴のニックネームは「ブルドーザー」だそうだがそれは違うんじゃないか? 皮肉を込めてそう呼んでいるのならOK。)

エロイ・ロハス 5R KO 浅川誠二
(WBA世界フェザー級タイトル戦、1994年)
ロハス:左ジャブと右ストレート
浅川:左ジャブと左フック
(ダウンシーン)
5R:右ストレートで2度、浅川がダウン
(感想:ロハスがタイトル防衛。浅川は日本王座、東洋王座(いずれもフェザー級)を獲得している選手だが、朴永均が王者だったときに挑戦してKO負け。攻撃のセンスは良いが、打たれ弱いところがある。多彩でよく伸び、それでいてパワフルな左を使いこなすロハス。浅川は左フックを決めるなど健闘するが、ディフェンスされ、パンチの正確さに欠ける。5R、強烈な右ストレートで浅川がダウン。さらに左フックからの右ストレートで二度目、KO。ある程度予想された結果ではあったが、ロハスが痛烈なKO勝利。浅川のダウンはかなり強烈でダメージが心配された(これで引退)。)

エロイ・ロハス 12R 判定 平仲信敏
(WBA世界フェザー級タイトル戦、1995年)
ロハス:左ジャブと右ストレート
平仲:右ジャブと左ストレート
(ダウンシーン)
8R:右フックでロハスがダウン
(感想:ロハスがタイトル防衛。3、4、5、11Rがカットされた映像で観戦。福岡の田川市で行われた一戦。平仲は沖縄の出身であるが、所属ジムは福岡にある。セコンドにはガッツ石松。平仲がサウスポースタイルで積極的に前に出るが、ロハスはフットワークとディフェンスで当てさせない。ロハスの伸びのあるジャブ・ストレートで平仲の右目が腫れていく。8R、右フックでロハスがダウン。勝負は判定へ。3-0。平仲はダウンを奪ったが負けてしまった(ボクシングの基本はやはりジャブである)。その後、ロハスは強打者ウィルフレド・バスケスにKO負け。ブランクを作りながらリングに上がり続けたが、世界王座に返り咲くことはなかった(2005年に引退)。「ボクシングはあまり好きではない」と語っていたそうだが、長いキャリアがそれは本心ではなかったことを物語っている。)

①「WBA World Featherweight Title
Yong-Kyun Park vs. Eloy Rojas」
②「WBA World Featherweight Title
Eloy Rojas vs. Asakawa Seiji」
③「WBA World Featherweight Title
Eloy Rojas vs. Hiranaka Nobutoshi」

淺川誠二(Asakawa Seiji)のページ
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ウィルフレド・バスケス(Wilfredo Vazquez)のページ

文成吉(Moon Sung Kil)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

ハードパンチャー文成吉。カオコー・ギャラクシー戦、ナナ・コナドゥ戦、ヒルベルト・ローマン戦を紹介します。

「韓国の石の拳」文成吉(Moon Sung Kil)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

文成吉(韓国)
身長165cm:オーソドックス(右構え)

文成吉 6R 負傷判定 カオコー・ギャラクシー
(WBA世界バンタム級タイトル戦、1988年)
文:左ジャブと右フック
カオコー:右ジャブと左ストレート
(感想:文がタイトル獲得。アマチュアで実績がある文。オリンピックでは敗退してしまったが、世界選手権、アジア大会で優勝。そのままアマチュアでオリンピックを目指す話もあったようだが、プロ入り。所属する「パルパルジム」は設備が整った立派なジムらしく、これまで全勝。七戦目でこの世界挑戦。カオコーはあのカオサイの双子の兄。こちらもプロデビュー以来全勝で、弟と同じサウスポー。強打者ウィルフレド・バスケスを地元バンコクで破って王者に。これが初防衛戦となる。ソウルで行われた試合。左ジャブと右フックで前に出る文。パンチはあるが無器用なガチャガチャした攻撃。カオコーはキレイなボクシング。攻めてくる文を右ジャブと左ストレートで迎え撃つ。両者のスタイルが違うためか、かみ合わない展開。6R、バッティングで文が負傷。押し気味だった文が負傷判定で勝利。ダウンシーンは無し。文はアマチュアで優秀だったそうだが、それはホントなのか? と思うような粗い攻撃。強さはあるが、「アマチュア出身」という感じがしない、ケンカのような戦いぶりだった。両者は後にタイで再戦。)

文成吉 9R 負傷判定 ナナ・コナドゥ
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1990年)
文:左ジャブと右ストレート
コナドゥ:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
1R:左フック、右フックで2度、コナドゥがダウン、左フックで文がダウン
3R:左フックでコナドゥがダウン
4R:左ジャブの連打で文がダウン
(感想:文が二階級制覇。カオコーにWBA世界バンタム級タイトルを奪回されて初黒星を喫した文。本来の階級に戻してJ・バンタム級で世界挑戦。コナドゥはガーナの黒人選手。スラリとした体型から繰り出すジャブ、ワンツー、振りが大きめの左フックが武器。メキシコでヒルベルト・ローマンを何度もダウンさせてWBC世界J・バンタム級タイトル獲得。これが初防衛戦となる。ソウルで行われた試合。文が左ジャブと右ストレートで前に出る。コナドゥは左ジャブと右ストレート。強打者同士ではあるが、1Rから意外なダウンの応酬で波乱の幕開け。3R、4Rのダウン。文のパンチは大振りで、打ち方はコナドゥの方が「伸びとキレ」があって良い印象。しかし、コナドゥも目が腫れるなど苦しい展開。文のまぶたの負傷により9R 終了で判定を取ることに。またしても文が負傷判定で王座に。過去にこういうことがあったかどうかは知らないが、二試合とも負傷判定で二階級制覇をした選手がいただろうか? 文が無器用ながら、パンチの強さで二階級制覇達成。バランスの悪さでダウンを食った文。意外な打たれ弱さを見せたコナドゥ。実力的には互角か?)

文成吉 9R TKO ヒルベルト・ローマン
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1990年)
文:左ジャブと右ストレート
ローマン:フットワークと左ジャブ
(ダウンシーン)
1R:左フックでローマンがダウン
(感想:文がタイトル防衛。ソウルで行われた文の初防衛戦。ローマンは元王者であり、日本でも有名なテクニシャン。左のパンチが得意で、小柄な身体から伸びと鋭さのある左ジャブを飛ばして自分のペースに持ち込むのが巧い選手。文が粗いハードパンチで前進。ローマンは細かいパンチ。押され気味のローマン。8R終了で棄権。ローマンは日本のファンにもなじみがある名選手だが、ポイントを取るだけの当てるパンチではプロの選手としてはやはり物足りない。文は器用さには欠けるが、硬そうな拳で相手を圧倒するような攻めをする。それが本来のプロボクシングのチャンピオンではないだろうか。文はその後も防衛を重ね、ラストファイトはホセ・ルイス・ブエノとの防衛戦(判定負けで王座陥落)。王座を獲った試合は二度とも(ちょっと情けない気もする)負傷判定であったが、J・バンタム級王座の防衛戦では前王者のコナドゥを返り討ちにしたり、若手をKOしたり、と見事な強さを見せた。)

①「WBA World Bantamweight Title
Khaokor Galaxy vs. Sung Kil Moon」
②「WBC World Super Flyweight Title
Nana Yaw Konadu vs. Sung Kil Moon」
③「WBC World Super Flyweight Title
Sung Kil Moon vs. Gilberto Roman」

カオコー・ギャラクシー(Khaokor Galaxy)のページ
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ナナ・コナドゥ(Nana Yaw Konadu)のページ
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ヒルベルト・ローマン(Gilberto Roman)のページ

2019年12月29日日曜日

平仲明信(Hiranaka Akinobu)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

沖縄のハードパンチャー、平仲明信。金応植戦、エドウィン・ロサリオ戦、モーリス・イースト戦を紹介します。

平仲明信(Hiranaka Akinobu)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

平仲明信(日本)
身長170cm:オーソドックス(右構え)

平仲明信 5R KO 金応植
(J・ウェルター級10回戦、1991年)
平仲:左ジャブと左フック
金:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
1R:右ストレートで金がダウン
5R:左ボディフックで金がダウン
(感想:沖縄県出身の平仲。「平仲明信」はリングネームで本名は「平仲信明」。高校でボクシングを始め、1984年のロサンゼルスオリンピックにウェルター級で出場(メダルは獲得ならず)。プロ入り後、全勝で「平仲伸章」の名でファン・マルチン・コッジ(アルゼンチン)のWBA世界J・ウェルター級王座にイタリアで挑戦、判定負け。金戦は再び世界を狙う「世界前哨戦」となる。金は一体何者なのだろう? 「BOXREC」の記録によると一度も勝利したことがない選手。「後楽園ホール」で行われた一戦。1R、右ストレートで金がダウン。その後、平仲の頭が金のアゴを直撃。倒れたまま立とうとしない金にレフェリーはカウントを取る。どうやら「続行できるのに立ち上がらない」とみなされたようだ。カウントが始まるとすぐに立ち上がり、金は反撃。5R、左ボディで金がダウン。平仲が勝利。やや攻めが粗かったが、ひたすら前進して強打で金をKO。沖縄のジム所属ということでマッチメークが難しく、試合数が少ない平仲。次の試合は1年と数ヶ月後。相手はWBA世界J・ウェルター級王者エドウィン・ロサリオ。)

平仲明信 1R TKO エドウィン・ロサリオ
(WBA世界J・ウェルター級タイトル戦、1992年)
平仲:左ジャブと左右フック
ロサリオ:左ジャブと左右フック
(感想:平仲がタイトル獲得。平仲の二度目の世界挑戦。王者ロサリオはプエルトリコのハードパンチャー。かつては全勝で大いに期待されていたが、ホセ・ルイス・ラミレスにTKO負けするなど、意外な打たれ脆さを露呈。さらにヘクター・カマチョやフリオ・セサール・チャベスといった大物との重要な試合も落とし、残念な状況に。ただ、ロレト・ガルサを痛烈にKOしてこの王座(WBA世界J・ウェルター級タイトル)を獲得するなど、パワーは健在。メキシコシティで行われた一戦。1R、左フックでグラついたロサリオに平仲が猛攻。ロープ際に追い込んで連打したところでレフェリーストップ。ダウンシーンは無し。平仲が世界的選手であるロサリオからベルトを奪う殊勲。早い決着だったが、ロサリオの「ガツン」というパンチがヒットしたシーンも。TKOの瞬間、リングサイドで観戦のヘクター・カマチョがガッツポーズ。カマチョはロサリオに勝った試合では大苦戦した。そのため平仲を応援していたと思われる。)  

モーリス・イースト 11R TKO 平仲明信
(WBA世界J・ウェルター級タイトル戦、1992年)
平仲:左ジャブ、左右フック
イースト:右ジャブ、左ストレート、右フック
(ダウンシーン)
11R:左ストレートで平仲がダウン
(感想:イーストがタイトル獲得。平仲の初防衛戦。相手はフィリピンのイースト。東洋太平洋J・ウェルター級タイトルを獲得している選手だが、国際的には無名。世界的選手ロサリオに勝った平仲にはさほど難しい相手ではないだろう、というのが戦前の予想。日本武道館で行われた一戦。平仲は例によって左ジャブと左右フックでひたすら前進して接近戦。サウスポーのイーストは平仲の強打に逃げることもなく左ストレートでカウンターを取り、右フックも力強い。動きが鈍くなってきた平仲が11R、左ストレートでダウン。立ったがフラついており、レフェリーは試合を止めた。平仲がまさかの王座陥落。平仲の圧力に負けじと打ち返すイーストは生中継で見ていたときは「しぶとい」と思ったものだが、改めて見てみると、伸びのある左ストレートと右フックを効果的に使える良い選手であった。名王者カオサイ・ギャラクシーが「ここぞというときに前に出ない選手は勝てない」という趣旨の発言をしたことがあるが、そういう意味ではイーストの戦い方は「合格」だった(しかしながら、初防衛戦で元王者コッジにKO負け)。平仲はイースト戦後の検査で脳内出血が確認され、引退。世界的な選手が多いJ・ウェルター級。イースト戦に勝てば世界的に名のある選手との対戦もあったのではないかと思うと、イーストに負けたのはあまりにも残念。引退後はボクシングジムを経営している。)

①「Hiranaka Akinobu vs. Kwon Shik Kim」
②「WBA World Super Lightweight Title
Edwin Rosario vs. Hiranaka Akinobu」
③「WBA World Super Lightweight Title
Hiranaka Akinobu vs. Morris East」

ファン・マルチン・コッジ(Juan Martin Coggi)のページ
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エドウィン・ロサリオ(Edwin Rosario)のページ

レノックス・ルイス(Lennox Lewis)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

世界ヘビー級王者。驚異の右ストレート、ルイス。リディック・ボウ戦、マイク・ウィーバー戦、ドノバン・ラドック戦を紹介します。

レノックス・ルイス(Lennox Lewis)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

レノックス・ルイス(イギリス)
身長196cm:オーソドックス(右構え)

レノックス・ルイス 2R RSC リディック・ボウ
(ソウルオリンピック・スーパーヘビー級決勝、1988年)
ルイス:左ジャブ、右ストレート
ボウ:左ジャブ、アッパー
(ダウンシーン)
2R:左フックからのラッシュでボウがスタンディングダウン
(感想:ロンドン生まれのルイス。カナダに移住し、ボクシングを始める。ロス五輪(1984年)に出場したが、メダル獲得ならず。そして、4年後のソウル。スーパーヘビー級決勝戦。相手はアメリカのボウ。すでにプロ的なファイトスタイルのルイス。受け身の姿勢のボウ。ルイスが左ジャブ、右ストレートで攻め、ボウは左ジャブで応戦。2Rにルイスがラッシュ。ストップ勝ちで、金メダル。ボウもジャブやアッパーを使ったが、右ストレートからの左ストレートを喰ってしまった。アマボクシングはレフェリーの注意が多く、ストップもプロよりはずっと早い。プロは強いパンチを当て続けて倒すのが目的だが、アマは「正確なパンチ」を評価する世界であり、強いパンチを連続してもらうと「勝負あった」といった感じで止められてしまう。この試合が原点となってプロでも互いに意識する関係に。ルイスはボウとの対戦を望んだが、ボウはこれに応じず。プロで二人が戦うことはなかった。)

レノックス・ルイス 6R KO マイク・ウィーバー
(ヘビー級10回戦、1991年)
ルイス:左ジャブ、右ストレート、左右フック
ウィーバー:左ジャブ、左右フック
(ダウンシーン)
6R:右ストレートでウィーバーがダウン
(感想:プロでは「英国の選手」としてリングに上がるルイス。これまで全勝。直前の試合では英国のライバルであり、強打者のゲーリー・メイソンをKOで下している。ウィーバーは元WBA王者。「ヘラクレス」というニックネームが示す通り筋肉美で有名で、ラリー・ホームズなど名のある選手と多く戦ってきた。しかし、試合運びはあまり巧くない、ピークを過ぎているという評価も。アメリカで行われた試合。1R、右カウンターが効いたのかウィーバーが受け身の姿勢に。元々試合運びはあまり巧くないウィーバーと力まかせのルイス。もみ合うシーンもあったが、6R、ジャブの打ち合いからいきなりの右ストレート一撃でウィーバーがダウン、ルイスのKO勝ち。もう一つな動きだったウィーバー。何のために試合をしたのか? と思うような内容(リングに上がるいろんな事情があるんだろうな、とも思うが)。ルイスは得意の右に世界レベルのパワーがあることを証明したが、動きが固かった。)

レノックス・ルイス 2R KO ドノバン・ラドック
(WBC世界ヘビー級挑戦者決定戦、1992年)
ルイス:左ジャブ、右ストレート
ラドック:左ジャブ
(ダウンシーン)
1R:右ストレートでラドックがダウン
2R:連打で2度、ラドックがダウン
(感想:イベンダー・ホリフィールドを体格差で破って世界ヘビー級王者になったリディック・ボウ。本来ならルイスの挑戦を受けなければならないところだが、ルイスとの対戦を拒否(未だに謎の出来事。ボウは力を付けており、オリンピックで負けたときとは違う。ルイスは確かに強打者だが、動きに粗さもあり、ボウからすれば勝てない相手ではない。それはともかく、ルイス戦を拒否したことでボウはその後のキャリアが色あせてしまった感じになり、「チキンハート」とファンから見られるようになった)。このラドック戦は「WBC世界ヘビー級挑戦者決定戦」として行われたが、結果的に、ボウが剥奪されたWBC王座の「新王者決定戦」になった。ラドックはマイク・タイソンとの豪快な試合で有名なカナダの選手。「レイザー(カミソリ)」と呼ばれるほど鋭いパンチを打つ男で、「スマッシュ」と呼ばれる左フックには驚異的なパワーがある。ハードパンチャー同士の対決。1R、互いに一発を狙う展開。ラドックは左のガードを下げてパンチを打つクセがあり、強烈な右ストレートを食ってダウン。2Rにも二度のダウンを喫し、KO。衝撃的な右でルイスが圧勝。ヘビー級のパンチの怖さを感じた試合。個性的なスタイルのラドックだが、「個性的である」ということはそれだけ隙もあるということ。その隙を突いたルイスが一気に勝ってしまった。タイソンとパワフルな試合をやったラドックには大きな期待が寄せられていたが、結局、世界王者にはなれず。ルイスのその後の活躍はおなじみ。伏兵にドカンと倒されたこともあったが、その都度リベンジ。何度も王座に返り咲き、タイソンらのビッグネームを下した。)

①「Seoul Olympic Games
Lennox Lewis vs. Riddick Bowe」
②「Lennox Lewis vs. Mike Weaver」
③「WBC World Heavyweight
Lennox Lewis vs. Donovan Ruddock」

マイク・ウィーバー(Mike "Hercules" Weaver)のページ
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ドノバン・ラドック(Donovan "Razor" Ruddock)のページ

ヘンリー・マスケ(Henry Maske)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

ドイツの英雄、ヘンリー・マスケ。チャールズ・ウィリアムス戦、アンソニー・ヘンブリック戦、アイラン・バークレー戦を紹介します。

ヘンリー・マスケ(Henry Maske)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ヘンリー・マスケ(ドイツ)
身長189cm:サウスポー

ヘンリー・マスケ 12R 判定 チャールズ・ウィリアムス
(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1993年)
マスケ:右ジャブ、左ストレート
ウィリアムス:左ジャブ、右ストレート
(感想:マスケがタイトル獲得。東ドイツ出身のマスケ。ニックネームは「Gentleman」(「見た目の雰囲気とクリーンな試合ぶり」をイメージしているのだと思われる)。子供の頃からボクシングに親しみ、1988年ソウルオリンピックでは東ドイツ代表で出場し、ミドル級で金メダル獲得(ベルリンの壁が壊れてドイツが東西統一されたため、最後の「東ドイツ代表」となった)。東側の国がプロボクシングに参入していく状況でマスケもプロ入り。元WBA世界L・ヘビー級王者レスリー・スチュワートらを相手にこれまで全勝。ウィリアムスは「プリンス」と呼ばれる男で、意味は「L・ヘビー級のナンバーワン」。パワフルなフックが武器。ドイツで行われた試合(マスケの世界戦は全てドイツ。アメリカでは彼の試合はウケなかっただろうから、それでよかったような気もする)。1Rから左ジャブ、右ストレートで攻めるウィリアムス。しかし、マスケの当てさせないディフェンス、クリンチ、左ストレートカウンターでチョコチョコっとポイントを取られ続ける。判定は3-0。ダウンシーンは無し。マスケが「当てるだけのパンチ」で世界タイトルを獲得。エキサイティングではない、アマチュア的な試合。プロでそれをやってはいけない、という気もするが、そういうやり方で世界王座を獲る時代が来たか、という感じも。クリンチが多かった試合。選手よりもレフェリーの方が疲れたのでは?)

ヘンリー・マスケ 12R 判定 アンソニー・ヘンブリック
(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1993年)
マスケ:右ジャブ、左ストレート
ヘンブリック:左ジャブ、右フック
(感想:マスケがタイトル初防衛。ヘンブリックは全米L・ヘビー級戦で1RでTKO負けしたり、リーオンザー・バーバーのWBO王座に挑戦して判定負けしたり、オーリン・ノリスと北米クルーザー級王座を争ってTKO負けしたり。「トップクラス」というより「二番手」といった感じのポジションの選手。試合内容の方はウィリアムス戦と似たような展開、というか同じ(マスケって誰とやっても同じ内容?)。左ジャブ、右フックで前に出るヘンブリックに対し、マスケはディフェンス、クリンチ、カウンターでポイントを取り、判定は3-0。ダウンシーンは無し。この試合の見所はヘンブリック。ラウンド終了時に後ろ向きに飛び跳ねてコーナーに戻ったり、相手にジャンプするかのように飛び込んでパンチを打ったりするなど実に個性的(個人的にはそういう選手は嫌いじゃない)。記録によると全米L・ヘビー級王座は獲得できたが、世界タイトルは獲れなかった。少し残念。)

ヘンリー・マスケ 10R TKO アイラン・バークレー
(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1994年)
マスケ:右ジャブ、左ストレート、左フック
バークレー:左右フック
(感想:マスケがタイトル防衛。リングアナはマイケル・バッファー。リングのキャンバスにはジム・キャリーの映画『マスク』のイラスト(「マスケ」と「マスク」をかけてるのだと思われる)。挑戦者「ブロンクスの荒くれ者」バークレー(三階級制覇王者。WBA世界L・ヘビー級王座を獲得している)はいつもの乱打で突進するが、本来はL・ヘビー級の選手ではない。マスケは例によって「ディフェンス、クリンチ、カウンターでポイントを取る」作戦。相手が大きくない選手だからか、「お前の試合はつまらん」と誰かに言われたからなのかは知らないが、この試合のマスケは少し手数が多く、左フックでボディを叩くなどやや積極的。しかしながら戦いの基本はいつもと変わらない。9R終了で顔が腫れたバークレーがギブアップ(ダウンシーンは無し)。「KO勝ち」に喜ぶマスケ(地元のファンと本人が喜んでいるのであればそれもよかろう)。マスケはその後も防衛を続けたが、WBA王者バージル・ヒルと王座統一戦、初黒星。執念深い(?)マスケ。その後、何年も経ってヒルと再戦。3-0の判定勝ちでリベンジ、ラストファイト。引退後はマクドナルドのチェーン店を経営したり、TVでボクシングコメンテーターをしているとのこと。)

①「IBF World Light Heavyweight Title
Charles Williams vs. Henry Maske」
②「IBF World Light Heavyweight Title
Henry Maske vs. Anthony Hembrick」
③「IBF World Light Heavyweight Title
Henry Maske vs. Iran Barkley」

チャールズ・ウィリアムス(Charles Williams)のページ
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アイラン・バークレー(Iran "The Blade" Barkley)のページ

2019年12月28日土曜日

フリオ・セサール・バスケス(Julio Cesar Vasquez)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBA世界J・ミドル級王者。アルゼンチンの剛腕。上山仁戦、アキリノ・アスプリーリャ戦、アーロン・デービス戦を紹介します。
フリオ・セサール・バスケス(Julio Cesar Vasquez)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

フリオ・セサール・バスケス(アルゼンチン)
身長179cm:サウスポー

フリオ・セサール・バスケス 1R KO 上山仁
(WBA世界J・ミドル級王座決定戦、1992年)
バスケス:右ジャブ、左ストレート、左右フック
上山:左ジャブと左フック
(ダウンシーン)
1R:左フックの連打、左ストレート、左フックで3度、上山がダウン
(感想:バスケスがタイトル獲得。アルゼンチンの怪力サウスポー、バスケス。アマチュアでは無敗だったという。プロ転向。連戦連勝だったが、後に世界J・ミドル級王者になるバーノ・フィリップスに反則負け。負けたのは生涯でそれだけ。上山は日本J・ミドル級王者。敵地でどんな試合を見せるか、といったところ。ブエノスアイレスで行われた試合。右ジャブと左ストレートで圧力をかけるバスケス。上山は左ジャブと左フックで応戦。バスケスの荒っぽいパワーが爆発。強烈なパンチで上山が三度ダウンして終了。「試合」というより「惨劇」といった感じのKO。上山も日本の重量級ではトップだが、バスケスとは身体全体のパワーが違った。また、バスケスはパワーだけではなくパンチにキレとスピードもあった。)

フリオ・セサール・バスケス 1R KO アキリノ・アスプリーリャ
(WBA世界J・ミドル級タイトル戦、1993年)
バスケス:右ジャブと左ストレート
アスプリーリャ:左ジャブ
(ダウンシーン)
1R:左ストレート連打でアスプリーリャがダウン
(感想:バスケスがタイトル初防衛。パナマのアスプリーリャ。WBAの地域王座(J・ミドル級)を獲得しているが、元々はJ・ウェルター級の選手。これが世界初挑戦となる。上山戦と同様、右ジャブと左ストレートで前進するバスケス。アスプリーリャはジャブ。アスプリーリャがロープを背負ってのけぞった体勢になったところにバスケスが左ストレートを連打、KO。バスケスが王座決定戦に続いて1RでKO勝利。あっけないKOだったが、力の差があるにもかかわらず当てるだけのパンチで12Rやる選手よりは、豪快な攻めをするバスケスの方がボクサーの本来の目的(誰が一番腕っぷしが強いのかを試合で証明すること)・怖さを感じさせる。アスプリーリャはその後、負けが多いキャリアとなった。J・ミドル級の選手ではなかったようだ。)

フリオ・セサール・バスケス 12R 判定 アーロン・デービス
(WBA世界J・ミドル級タイトル戦、1993年)
バスケス:右ジャブ、左ストレート、左右フック
デービス:左ジャブと左フック
(感想:バスケスがタイトル防衛。モナコのロンテカルロで行われた試合。デービスは元WBA世界ウェルター級王者。ニックネームは「スーパーマン」。誰とでも戦うパワーと気の強さを持つ男で、特に左スックが強い。メルドリック・テーラーに敗れて王座陥落。階級を上げて二階級制覇なるか、といった状況。左右の構えの違いはあるがパワーファイター同士。一進一退の内容。互いに強打を警戒し、どちらかが一方的になるようなこともなく12R終了。判定は2-0。ダウンシーンは無し。手数と積極性でバスケスが押し切った印象。あのバスケスにパワーでは負けてはいなかったデービスだが、ハードパンチャーは狙いすぎて手数が少なくなる、というパターンで負けてしまった。自分から積極的に試合の流れをつくることができれば新王者誕生だったかも知れない。後、バスケスは王座を防衛し続けたが、パーネル・ウィテカーに敗れてしまった(1995年)。その後も王座を取り戻したり、マイナー団体の王座に挑戦したりするなど、息の長い活躍を見せた。)

①「WBA World Super Welterweight Title
Julio César Vásquez vs. Kamiyama Hitoshi」
②「WBA World Super Welterweight Title
Julio César Vásquez vs. Aquilino Asprilla」
③「WBA World Super Welterweight Title
Julio César Vásquez vs. Aaron Davis」

アーロン・デイヴィス(Aaron "Superman" Davis)のページ

ヘナロ・エルナンデス(Genaro Hernandez)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

長身のテクニシャン、エルナンデス。ダニエル・ロンダ戦、渡辺雄二戦、ラウル・ペレス戦を紹介します。

ヘナロ・エルナンデス(Genaro Hernandez)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ヘナロ・エルナンデス(アメリカ)
身長180cm:オーソドックス(右構え)

ヘナロ・エルナンデス 9R TKO ダニエル・ロンダ
(WBA世界J・ライト級王座決定戦、1991年)
エルナンデス:左ジャブ、右ストレート、左フック
ロンダ:左ジャブと右フック
(ダウンシーン)
7R:左フック、右アッパーで2度、ロンダがダウン
9R:右ストレートからの左フックでロンダがダウン
(感想:エルナンデスがタイトル獲得。メキシコ系アメリカ人のエルナンデス。本人によると「ヘナロ」ではなく「ジェナロ」と読むのが正しいとのこと。当時、日本では既に「ヘナロ・エルナンデス」という名で通っていたため、結局、今でも「ヘナロ」と呼ばれている。カリフォルニア州ロサンゼルス出身。兄弟もボクサーだったという。アマチュアで経験を積んでプロ入り。連戦連勝で、ここまで全勝。「帝拳ジム」とプロモート契約をしているため、日本のリングにも上がり、見事なパンチでKO勝利。ファンの前でレベルの高さを見せつけた。ただ、右の拳を痛めることが多く、本来のパワーをフルに出せないのがつらいところ。ロンダはフランスの黒人選手。欧州J・ライト級王座を獲得しているが、ブライアン・ミッチェルが王者だった頃にこの王座(WBA世界J・ライト級王座)に挑戦して15R判定負け。これが二度目の世界挑戦。フランスで行われた試合。共に左ジャブから入るなど似たような戦い方をするが、リーチの長さが違う。エルナンデスの懐に入っていけないロンダはディフェンスされ、強打を喰うばかり。7Rに二度のダウン。9R、右ストレートからの左フックでダウン。エルナンデスが圧勝。最後のダウンを奪ったパンチは「何が当たったか?」と思うぐらい速かった。残念な結果に終わったロンダだが、後にWBO王座を獲得。防衛はできなかったが、ようやく世界王者になれた。)


ヘナロ・エルナンデス 6R TKO 渡辺雄二
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1992年)
エルナンデス:左ジャブ、右ストレート、左フック
渡辺:左ジャブ、右ストレート、左右フック
(感想:エルナンデスがタイトル防衛。日本で行われた試合。渡辺はここまで全てKO勝ちの「KOキング」。そのパワーと顔立ちで「次期スーパースター候補」といったところ。左ジャブで前に出る渡辺。エルナンデスが左ジャブ、左フックで迎え撃つ。渡辺の攻撃をディフェンスし、長いリーチで器用に接近戦を有利に進めるエルナンデス。打たれる渡辺。鼻血を出し、6Rに連打されたところでレフェリーストップ。ダウンシーンは無し。エルナンデスが身体の長所を生かして快勝。左フックからの左アッパーのコンビネーションは芸術的だった。渡辺のローブローを「ボディが効いた」と観客が勘違いして興奮するシーンもあったが、渡辺の有効打は少な目。懐の深いエルナンデスを攻略することはできなかった。)

ヘナロ・エルナンデス 1R 負傷引分 ラウル・ペレス
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1993年)
(感想:エルナンデスがタイトル防衛。元世界バンタム、J・フェザー級王者のペレスが三階級制覇を狙ってエルナンデスに挑戦。共に背が高いが、ペレスはKOで勝つタイプではない。開始早々、頭をぶつけてペレスが流血。ドクターチェックであっさり試合終了。何とも言えない結果。ただ、頭をぶつけただけだった試合。再戦が行われることに。)

ヘナロ・エルナンデス 8R KO ラウル・ペレス
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1993年)
エルナンデス:左ジャブ、右ストレート、左フック
ペレス:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
8R:左ボディフックでペレスがダウン
(感想:エルナンデスがタイトル防衛。再戦。共に長身でジャブ、ストレートを使うタイプだが、エルナンデスの「パワー」「多彩な攻撃」「懐の深さ」によりペレスの攻撃が通用しない。8R、唐突なタイミングでエルナンデスがボディーへ左フック。前のめりにダウンしたペレスは立てなかった。エルナンデスがボディ一発でKO防衛。エルナンデスは右の拳を痛めがちで、この試合も左での攻撃がメインだった。ペレスは背の高さでは負けてはいなかったが、身体全体のパワーではエルナンデスには敵わなかった。その後も防衛を続けたエルナンデスは王座返上。以前からウワサされていたオスカー・デラ・ホーヤとの対戦が実現(WBO世界ライト級王座戦)。それには敗れてしまったが、老雄アズマー・ネルソンに勝利してWBC世界J・ライト級王座獲得。防衛にも成功したが、あのフロイド・メイウェザー・Jrに敗北。もし、エルナンデスの右の拳がもっと頑丈だったら、アレクシス・アルゲリョのような存在になっていたかも知れない。その場合、デラ・ホーヤやメイウェザーはエルナンデスに勝つことができただろうか? エルナンデスはメイウェザー戦後、歴戦のダメージがあることが判明し、引退。引退後はジムでトレーナーをやったり、ボクシング中継の解説をやったりしていたが、難病にかかってしまう。完治せず、2011年、45歳で死去。)

①「WBA World Super Featherweight Title
Genaro Hernández vs. Daniel Londas」
②「WBA World Super Featherweight Title
Genaro Hernández vs. Watanabe Yuji」
③「WBA World Super Featherweight Title
Genaro Hernández vs. Raúl Pérez」
④「WBA World Super Featherweight Title
Genaro Hernández vs. Raúl Pérez」

渡辺雄二(Watanabe Yuji)のページ
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ラウル・ペレス(Raul Perez)のページ

ユーリ・アルバチャコフ(Yuri Arbachakov)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

「ロシアン・スナイパー」ユーリ。水野隆博戦、ムアンチャイ・キティカセム戦、渡久地隆人戦を紹介します。

「ロシアン・スナイパー」ユーリ・アルバチャコフ(Yuri Arbachakov)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ユーリ・アルバチャコフ(ロシア)
身長163cm:オーソドックス(右構え)

ユーリ・アルバチャコフ 1R KO 水野隆博
(日本フライ級王座決定戦、1991年)
ユーリ:左ジャブ、右ストレート、左フック
水野:右ジャブと右フック
(ダウンシーン)
1R:右ストレート、右ストレート、右フックからの左ボディーで3度、水野がダウン
(感想:ユーリがタイトル獲得。アジア系ロシア人のユーリ。本名は「ユーリ・ヤコヴレヴィチ・アルバチャコフ」(長い)。アマチュアで世界王者に。ソ連で政変。「ペレストロイカ(改革開放)政策」によりソ連のアスリートがプロに参戦。アントニオ猪木の仲介でスラフ・ヤノフスキー、オルズベック・ナザロフらと共に日本の協栄ジムに入門。これまで7連勝(7KO)で、WBC9位。リングネームは「ユーリ海老原」(ユーリのリングネームは複数あるが、本人はこの名を嫌っているらしい。本人の意思を尊重して本名で呼ぶことにします)。ピューマ渡久地の持つ王座に挑戦する予定だったが、渡久地が試合前に所属ジムとトラブルを起こし失踪。水野と王座決定戦を行うことに。相手の水野は日本4位で4勝(1KO)4敗のサウスポー。共に初の王座戦。両者ジャブ。水野は足を使いながら左ストレート、右フック。ユーリの右ストレートで水野が「ストン」とダウン。さらに右ストレートで二度目。最後は右フックからの左ボディーでスリーノックダウン、試合終了。パワーの差でユーリが圧勝。映像ではあっけなく終わったように見えたが、ユーリの右は想像以上に強いのだろう。水野の左ストレートも悪くはなかった。)

ユーリ・アルバチャコフ 8R KO ムアンチャイ・キティカセム
(WBC世界フライ級タイトル戦、1992年)
ユーリ:左ジャブ、右ストレート、左フック
ムアンチャイ:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
1R:右ストレートでムアンチャイがダウン
3R:左ジャブからの右ストレートでユーリがダウン、左フックでムアンチャイがダウン
8R:右ストレートでムアンチャイがダウン
(感想:ユーリがタイトル獲得。ユーリが全勝で世界初挑戦。ムアンチャイは二階級を制覇しているタイのストレートパンチャー。負けたがアメリカで人気者マイケル・カルバハルと対戦。強打者との対戦には慣れている。日本で行われた試合。スピードとパンチがある両者。1R、3Rに倒し合い、ダウン応酬の激戦に。打たれ強くないムアンチャイだが、ダウンしても回復が早い。8R、真っ直ぐな攻撃が多いムアンチャイのディフェンスの隙を突いてユーリが右ストレート。ムアンチャイが前のめりにダウンし、失神KO。パワーとディフェンスでユーリが壮絶なKO勝利。ムアンチャイには打たれ弱さがあるためこの結果は予想できなくはなかったが、想像以上の衝撃があった。この両者は後にタイで再戦。ユーリがKOで王座防衛。)

ユーリ・アルバチャコフ 9R TKO 渡久地隆人
(WBC世界フライ級タイトル戦、1992年)
ユーリ:左ジャブ、右ストレート、左フック
渡久地:左右フック
(ダウンシーン)
7R:左フック、連打で2度、渡久地がダウン
(感想:ユーリがタイトル防衛。王座を守り続けるユーリ。当時、因縁のあった渡久地との対決。ライバル意識むき出しの渡久地は試合前の会見でユーリを挑発(いつも冷静なユーリが珍しく怒った顔に)。共にハードパンチャーだが渡久地は動きが硬い。ユーリが伸びのあるジャブ、ストレートとフットワークで渡久地を封じる。7R、左フックで渡久地がダウン。連打で二度目。何とか耐えた渡久地だが、9Rにラッシュされ、レフェリーストップ。ディフェンスの差が大きかった一戦。7Rのダウンを奪った左フックは実に見事だった。しかし、この試合でユーリはコブシを負傷、ブランク。10度目の防衛戦を一度は勝っているチャッチャイ・ダッチボーイジムと行ったが、判定負けで初黒星、王座陥落。そして引退。アマチュア時代からトップを走ってきたユーリ。「もう疲れた。もうたくさんだ」とコメントしてリングを去った。)

①「Japan Flyweight Title
Yuri Arbachakov vs. Mizuno Takahiro」
②「WBC World Flyweight Title
Muangchai Kittikasem vs. Yuri Arbachakov」
③「WBC World Flyweight Title
Yuri Arbachakov vs. Toguchi Takato」

ムアンチャイ・キティカセム(Muangchai Kittikasem)のページ

2019年12月27日金曜日

鬼塚勝也(Onizuka Katsuya)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBA世界J・バンタム級王者。千葉ラピソ戦、中島俊一戦、タノムサク・シスボーベー戦を紹介します。

鬼塚勝也(Onizuka Katsuya)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

鬼塚勝也(日本)
身長173cm:オーソドックス(右構え)

鬼塚勝也 1R KO 千葉ラピソ
(J・バンタム級10回戦、1990年)
鬼塚:左ジャブ、右ストレート、左フック
ラピソ:右ジャブと左ストレート
(ダウンシーン)
1R:左フックでラピソがダウン
(感想:福岡県出身の鬼塚。本名は「鬼塚隆」。子供の頃は体が弱かったらしく、強さに憧れたという。中学でボクシングを始め、アマチュアのリングへ。プロではこれまで全勝で、全日本新人王(J・バンタム級)を獲得している。ラピソはフィリピンの中堅どころ(レパード玉熊にKO負け)。積極的に攻めるサウスポーのラピソ。しかし、左フックでダウン。立ったもののふらついており、レフェリーはカウントアウト。鬼塚がワンパンチで倒すパワーとキレがあることを証明。ラピソは積極的だったが、接近戦ではサウスポーの持ち味は発揮できない。距離を取って戦うべきだった。)

鬼塚勝也 10R TKO 中島俊一
(日本J・バンタム級タイトル戦、1990年)
鬼塚:左ジャブ、右ストレート、左フック
中島:左右フックの変則的な攻め
(感想:鬼塚がタイトル獲得。全勝を守り続ける鬼塚が日本王座に初挑戦。王者の中島はタフな男で日本J・バンタム級王座を連続防衛している。ただ、直前の試合ではタイでカオサイ・ギャラクシーのWBA世界J・バンタム級王座に挑戦してTKO負けしており、コンディションが気になるところ。鬼塚の「きれいなボクシング」、中島の「変則的なボクシング」。タフな中島とよく打ち合う鬼塚。最終ラウンド、右ストレートをきっかけに鬼塚がラッシュ。タオル投入でTKO。ダウンシーンは無し。鬼塚は正統派の戦い方をする選手であるが、いざというときには正面から打ち合う度胸もあるところを見せた。判定で優勢な場合に「勝っているのだから」という理由で足を使って最終ラウンドを軽く流す選手がいるが、「最後まで倒しに行く」のが「一流選手の条件」ではないだろうか? 再戦も鬼塚の勝利(判定)。)

鬼塚勝也 12R 判定 タノムサク・シスボーベー
(WBA世界J・バンタム級王座決定戦、1992年)
鬼塚:左ジャブ、右ストレート、左フック
タノムサク:左ジャブと左フック
(感想:鬼塚がタイトル獲得。カオサイ・ギャラクシーがWBA世界J・バンタム級王座を返上。タイのタノムサクと鬼塚が決定戦。タノムサクはルイシト・エスピノサのWBA世界バンタム級王座に挑戦して判定負けしたことがあり、これが二度目の世界挑戦。互いにスピードがあり、ジャブを打ち合う。パンチを当てる技術はタノムサクの方が上か。7Rあたりからタノムサクはあまり前に出ず、ディフェンスとジャブが中心に。判定は3-0。ダウンシーンは無し。微妙な判定が議論を呼んだ一戦。タノムサクは当てるのが巧かったが、鬼塚もボディーを打つなど、よく打ち返していた。ダウンも無く、ジャッジもどちらにポイントをつけたらいいか迷ったラウンドも多かったろう。この試合の評価が難しいのは「ディフェンス」。いくら攻めてもパンチをブロックされてしまえばそれは「有効打」にはならない。タノムサクは中盤から受け身になった。これは「王座決定戦」であり、どちらもチャレンジャーであるため、共に最後まで攻め続ける必要があった。勝手に「自分の方がポイントで勝っている」などと計算してはならない。試合後の不満そうなタノムサクの表情が物語っているように実力はタノムサクの方が上だった。後、鬼塚は綱渡り的な形で王座防衛を続けたが、李炯哲にTKO負け、王座陥落。網膜剥離により引退。良い選手ではあったが、世界レベルとなると、少しパワー不足だった印象。引退後は絵画やデザインの世界で活躍しているとのこと。)

①「Onizuka Katsuya vs. Rex Rapiso」
②「Japan Junior Bantamweight Title
Nakajima Shunichi vs. Onizuka Katsuya」
③「WBA World Super Flyweight Title
Onizuka Katsuya vs. Thanomsak Sithbaobay」

リディック・ボウ(Riddick Bowe)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

世界ヘビー級王者。ブルックリン出身。バート・クーパー戦、イベンダー・ホリフィールド戦、ハービー・ハイド戦、を紹介します。
「ビッグ・ダディ」リディック・ボウ(Riddick Bowe)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

リディック・ボウ(アメリカ)
身長196cm:オーソドックス(右構え)

リディック・ボウ 2R KO バート・クーパー
(ヘビー級10回戦、1990年)
ボウ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
クーパー:左右フック
(ダウンシーン)
2R:右ストレート、連打からの左フックで2度、クーパーがダウン
(感想:ニューヨーク・ブルックリン出身のボウ。近所に住んでいたためマイク・タイソンのことは子供の頃から知っているという。アマチュアでは優秀な選手で大いに期待されていたが、やらかす。ソウルオリンピック(1988年)・スーパーヘビー級でのレノックス・ルイスとの決勝戦。受け身な試合ぶりでストップ負け。「チキンハート(根性がない)」と言われ、それはプロになってからもつきまとった。プロ入り後は全勝。ジャブ、ストレートを使う正統派ではあるが、フックも強い。クーパーはタフ男。これまで北米クルーザー級、ヘビー級王座を獲得。しかし、直前の試合では「マーシレス」レイ・マーサー(ソウルオリンピック・ヘビー級金メダル)と大激戦の末、判定負け。タフ男ではあるが、その試合のダメージが気になるところ。ラスベガス「ミラージュ」で行われた試合(メインイベントは「バスター・ダグラス vs. イベンダー・ホリフィールド」の世界ヘビー級王座戦)。積極的に左右フックで攻めるクーパーにジャブを飛ばすボウ。右ストレートで「ガクン」となったクーパーにラッシュ。2Rに二度ダウンを奪い、ボウが圧勝。タフ男クーパーをKO。結果的には楽勝だったが、クーパーは楽な相手ではない。多くの世界レベルの選手と激しい試合をやった「世界チャンピオン並み」の人気と実力の選手。そんなクーパーを倒したボウはやはりタダ者ではない。)

リディック・ボウ 12R 判定 イベンダー・ホリフィールド
(WBA・WBC・IBF世界ヘビー級タイトル戦、1992年)
ボウ:左ジャブと右ストレート
ホリフィールド:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
11R:右フック(ラビットパンチ?)でホリフィールドがダウン
(感想:ボウがタイトル獲得。トニー・タッブス(元WBA王者)、ブルース・セルドン(ボウと同様、世界を狙う男)といった選手を破ってボウが世界初挑戦。ホリフィールドはバスター・ダグラスをあっさりKOして王者になった「リアル・ディール(「ホンモノの男」の意)」。ジョージ・フォアマン、バート・クーパー、ラリー・ホームズを破って、これが四度目の防衛戦。ラスベガス「Thomas & Mack Center」で行われた試合。至近距離で打ち合う、我慢比べのようなぶつかり合い。しかし「体格の差」が。元々はクルーザー級のホリフィールドが押され気味に。判定は3-0でボウ。10Rに右アッパーで大きくグラついたホリフィールドはそのラウンド終盤には左フックで反撃するなど一歩も引かず打ち合った。単に勝ちたいだけならそんなに打ち合わずに足を使ってポイントを稼げばよかったと思われるが、ホリフィールドは最初から最後まで王者らしく攻め続けた。左フックの打ち方はホリフィールドの方が巧く、パワーがあった印象。ヘビー級では体格差のある試合は珍しくない。身体が大きい方の選手としては勝ってもあまり自慢にならないのではないか、という気もする。)

リディック・ボウ 6R KO ハービー・ハイド
(WBO世界ヘビー級タイトル戦、1995年)
ボウ:左ジャブと右ストレートで前に出る
ハイド:フットワークで周りながら左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
3R:右フック(?)、右アッパーで2度、ハイドがダウン
4R:左ジャブからの連打、右フックで2度、ハイドがダウン
5R:右フックでハイドがダウン
6R:右ストレート、右フックで2度、ハイドがダウン
(感想:ボウがタイトル獲得。ホリフィールドとの再戦に敗れて王座を失うと共に初黒星を喫したボウ。ターゲットをWBO王者ハイドに定める。ハイドはナイジェリア生まれでイギリス国籍の黒人で、ニックネームは「Dancing Destroyer(踊る破壊者)」。踊るように動いて相手をKOするという意味だが、それは「動きが軽い」ということも意味する。ラスベガス「MGM Grand」で行われた試合。ハイドはこれまで全勝でKOも多いことから期待されたが、「どっちがチャンピオンかわからない」といった感じの内容に(「こんな世界ヘビー級タイトル戦はイヤだ」と言いたくなるような内容)。ハイドはスピードはあるがガチャガチャした打ち方で、ヘッドバットを相手に喰らわすなどのお粗末な試合ぶり。思い切って(破れかぶれ?)打っていくシーンもあったが、ボウの圧力にビビってしまったのか何度もダウンを繰り返し、KO負け。これもまた体格差があった試合(ヘビー級は「何キロ以上」という世界なので体格差が大きくなることも珍しくないが、だからといってプロに「スーパーヘビー級」なんてものは必要ないと思う)。ボウがWBOタイトル獲得(これで世界の主要四団体のヘビー級タイトルを全部手に入れたことになる)。ハイドはだらしなかったが、ボウも空振りして転倒するなど何となく笑ってしまう内容だった。ボクシングは非常に危険なものであるので無責任に「もっと打ち合え」とか「思い切っていけ」などと言うことはできないが、ハイドも世界チャンピオンならもう少し強さを見せて欲しかったところ。ボウのその後のキャリアは残念。ホルヘ・ルイス・ゴンザレスやホリフィールド(三戦目)に勝利したが、アンドリュー・ゴロタに苦戦。何よりも残念なのが、レノックス・ルイスとプロで戦わなかったこと。モハメド・アリは同時代の強豪たちと戦ったが、次第にボクシング界は「強い者同士の対戦」を回避するようになっていく。統一戦などを積極的に行っていかない限り、ボクシングの人気は盛り上がらないままであろう。)

①「Riddick Bowe vs. Bert Cooper」
②「World Heavyweight Title
Evander Holyfield vs. Riddick Bowe」
③「WBO World Heavyweight Title
Herbie Hide vs. Riddick Bowe」

バート・クーパー(Bert Cooper)のページ
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イベンダー・ホリフィールド②(Evander Holyfield)のページ
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ハービー・ハイド(Herbie Hide)のページ

チャールズ・ウィリアムス(Charles Williams)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

L・ヘビー級の強打者、「プリンス」ウィリアムス。ボビー・チェズ戦、ジェームス・キンチェン戦、フレディ・デルガド戦を紹介します。

「プリンス」チャールズ・ウィリアムス(Charles Williams)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

チャールズ・ウィリアムス(アメリカ)
身長188cm:オーソドックス(右構え)

チャールズ・ウィリアムス 10R TKO ボビー・チェズ
(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1987年)
ウィリアムス:左ジャブ、右ストレート
チェズ:左ジャブと連打
(ダウンシーン)
2R:連打でウィリアムスがダウン
3R:右ストレートでウィリアムスがダウン
(感想:ウィリアムスがタイトル獲得。オハイオ州コロンバス出身のウィリアムス(マイク・タイソンをKOしたジェームス・ダグラスもコロンバス)。プロデビューは16歳の時で判定負け。その後も1RでKOされたり、マービン・ジョンソンに敗れたり、といった感じで連戦連勝というわけにはいかない。引退することを考えた時期もあったようだが、経験を積み全米L・ヘビー級タイトル獲得。そしてこの世界挑戦。ニックネームが「プリンス」。チェズを倒して「キング」になれるか、といったところ。王者チェズは重量級では貴重な白人。彼もまたつらい時期があったが、世界王者に。これが四度目の防衛戦。共にバランスがいい選手。互いにジャブを打ち合い、ウィリアムスは伸びのある左ジャブ、右ストレート、チェズは左ジャブと連打で攻める。2R、右ストレートからの連打でダウンして足に来たウィリアムス。3Rにもダウン。だが、意外に回復が早い。ウィリアムスの射程距離の長いジャブで目が腫れ、連打を喰らうチェズ。10Rのゴングに応じることができずTKOになった。ウィリアムスが逆転TKOでタイトルを獲得。どっちが勝ってもおかしくないぐらいの好試合となった。共にセンスのある選手だが、ウィリアムスの持つ武器の性能の方が上だった印象。)

チャールズ・ウィリアムス 2R TKO ジェームス・キンチェン
(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1991年)
ウィリアムス:左ジャブ、左右フック
キンチェン:左右フック
(ダウンシーン)
1R:連打でキンチェンがダウン
(感想:ウィリアムスがタイトル防衛。防衛を続けるウィリアムス。挑戦者キンチェンは元々はミドル級の選手。S・ミドルでの試合でトーマス・ハーンズを苦しめたキンチェンだが、バージル・ヒルのWBA世界L・ヘビー級タイトルに挑戦した試合では1RでKO負けしている。ウィリアムスが1RでのKOを狙うかのように左ジャブ、左右フックで攻める。応戦して打ち合うキンチェンだが、連打でダウン。2Rで終了。パワーの差が大きかった試合。初回から滅多打ちを喰らったキンチェン。試合前からミスマッチが予想されるような対戦は重量級では特に危険。そういう試合を組むべきではない。)

チャールズ・ウィリアムス 2R TKO フレディ・デルガド
(IBF世界L・ヘビー級タイトル戦、1991年)
ウィリアムス:左ジャブ、右ストレート、フック
デルガド:左右フック
(ダウンシーン)
1R:右アッパーでデルガドがダウン
(感想:ウィリアムスがタイトル防衛。デルガドはプエルトリコの選手。デビュー以来、無敗でマイケル・モーラーのWBO世界L・ヘビー級タイトルに挑戦したが、1RでTKO負け。ウィリアムス戦は二度目の世界挑戦となる。1Rから激しく打ち合う。ウィリアムスが伸びのある左ジャブ、右ストレートで攻め、デルガドは負けじと左右フック。右アッパーでデルガドがダウン。気が強いデルガドはよく打ち合うが、パワーの差が。2Rで終了。ウィリアムスはパワーだけではなく、動きも軽やかだった。安定の強さを見せたウィリアムス。しかし、次の試合でドイツのヘンリー・マスケに敗北、王座陥落。その後もリングに上がり、階級を下げてジェームス・トニーのIBF世界S・ミドル級王座に挑戦したがKO負け。IBF世界L・ヘビー級王者時代が彼のベストだった。)

①「IBF World Light Heavyweight Title
Bobby Czyz vs. Charles Williams」
②「IBF World Light Heavyweight Title
Charles Williams vs. James Kinchen」
③「IBF World Light Heavyweight Title
Charles Williams vs. Freddie Delgado」

ボビー・チェズ(Bobby Czyz)のページ
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ジェームス・キンチェン(James "The Heat" Kinchen)のページ

2019年12月26日木曜日

チャールズ・マレー(Charles Murray)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

IBF世界J・ウェルター級王者。速いパンチが武器。リビングストン・ブランブル戦、ロドニー・ムーア戦、コートニー・フーパー戦を紹介します。
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チャールズ・マレー(アメリカ)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

チャールズ・マレー 10R 判定 リビングストン・ブランブル
(J・ウェルター級10回戦、1991年)
マレー:左ジャブと右ストレート
ブランブル:左ジャブと右ストレート
(感想:ニュージャージー州サウス・オレンジ出身のマレー。ニックネームは「The Natural」(何が「ナチュラル」なのかは知らないが「天性の勘を持っている」という意味だと思われる)。バスケットボール選手になれるような身長ではなかったためボクシングを選んだらしい。アマチュアでは好成績だったが、ソウル五輪には出場ならず。プロ入りし、レイ・マーサー、アルフレド・コールらとトリオで売り出されてきた(結果的に三人とも世界王者に)。デビュー以来、全勝で全米J・ウェルター級王座を獲得するが、実力者テレンス・アリに2-1で判定負け、初黒星。ブランブル戦は復帰三戦目となる。ブランブルは元WBA 世界ライト級王者。長いパンチが武器のテクニシャンタイプであるが、接近戦で乱打する荒っぽいパワーもある。アトランチックシティ「コンベンション・ホール」で行われた試合。リングサイドでドナルド・トランプが観戦。先制攻撃をかけるブランブルだが、やや力みすぎ。マレーは軽いがシャープなパンチとディフェンス。結局、軽いパンチをチョコチョコ当てて、判定は3-0でマレー。ダウンシーンは無し。マレーは手数の多さと右アッパーが効果的だった。)

チャールズ・マレー 12R 判定 ロドニー・ムーア
(IBF世界J・ウェルター級王座決定戦、1993年)
マレー:左ジャブと右ストレート
ムーア:ガード高めで左ジャブ、右ストレート、左フック
(感想:マレーがタイトル獲得。ムーアは苦労人。デビュー戦に敗北(相手はタイロン・トライス。後、サイモン・ブラウンとIBF世界ウェルター級王座を争った)。二戦目、五戦目も敗北。次第に実力をつけていくが、テレンス・アリにTKO負け(アリは結局、世界王者にはなれなかったが、「若手の壁」として存在感を見せた)。地道に戦い続け、リビングストン・ブランブルに判定勝ちしてこの決定戦出場。共通点がある二人の対戦。どんな内容になるか? お互いシャープなパンチを打ち合い、一歩も譲らず。ムーアは左フックの打ち方が印象的だったが、マレーが手数とディフェンスで少しずつ上回る。判定は3-0(ダウンシーンは無し)。マレーは速いパンチだけではなく、いざとなると打ち合う度胸もあるところを見せた。ムーアはなかなか良いパンチを持っていた。この試合での踏ん張りがなかったならばマレーは世界王者になっていなかったのではないか? 2Rの始めに客席でのトラブルでファンが試合よりもそっちの方を見てしまうハプニングあり。プロの試合より客同士(?)のもめごとの方が注目を集めるのは選手としては少し悲しい。)

チャールズ・マレー 6R TKO コートニー・フーパー
(IBF世界J・ウェルター級タイトル戦、1993年)
マレー:左ジャブと右ストレート
フーパー:左ジャブと左フック
(感想:マレーがタイトル防衛。二度目の防衛戦。フーパーはWBA米大陸J・ウェルター級王座を獲得したことがあるが、メルドリック・テーラーのIBF世界J・ウェルター級王座への挑戦は判定負け。これが二度目の同王座へのチャレンジ。「小型ハグラー」といった感じで頑丈そうなフーパー。しかしながら、正直なところスピードがあまりなく、世界王者になれるような動きではない。マレーがテンポよくジャブ、ストレート、左フックのボディ打ちを決める。5R終了でフーパーはギブアップ。ダウンシーンは無し。5R終盤のマレーのラッシュが見所だった一戦。フーパーはこれで引退。マレーは次の防衛戦でジェイク・ロドリゲスに判定負け、王座陥落。その後もリングに上がり続け、北米J・ウェルター級王座を獲得するなどの活躍を見せたが、世界王座に返り咲くことはなかった。スピードはあったが、パワーの方はもう一つだったのが原因と思われる。引退後は若い選手の指導をしているとのこと。)

①「Charles Murray vs. Livingstone Bramble」
②「IBF World Super Lightweight Title
Charles Murray vs. Rodney Moore」
③「IBF World Super Lightweight Title
Charles Murray vs. Courtney Hooper」

リビングストン・ブランブル(Livingstone Bramble)のページ

ロッキー・ロックリッジ(Rocky Lockridge)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBA・IBF世界J・ライト級王者。ロジャー・メイウェザー戦、文泰鎮戦、バリー・マイケル戦を紹介します。

ロッキー・ロックリッジ(Rocky Lockridge)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ロッキー・ロックリッジ(アメリカ)
身長169cm:オーソドックス(右構え)

ロッキー・ロックリッジ 1R KO ロジャー・メイウェザー
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1984年)
ロックリッジ:左ジャブと左右フック
メイウェザー:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
1R:右フックでメイウェザーがダウン
(感想:ロックリッジがタイトル獲得。ワシントン州タコマ出身のロックリッジ。アマチュアで優秀な選手であったが、それでは生活できずプロ転向。全勝のままエウセビオ・ペドロサの持つWBA世界フェザー級王座に挑戦したが、15R判定負け。強打者ファン・ラポルテに2RでKOされ、全米フェザー級王座を失う。再度、ペドロサの王座に挑戦したが、またしても15R判定負け。階級を上げて、三度目の世界挑戦。王者メイウェザーは「ブラックマンバ(毒蛇)」と呼ばれる男で、鋭いパンチが武器の黒人パンチャー。サングラスをかけて入場のメイウェザーがロックリッジを挑発。ロックリッジのセコンドのルー・デュバは「自分のコーナーに行けよ」という感じのゼスチャー(メイウェザーとルー・デュバは後にWBC世界J・ウェルター級王座戦でもモメた)。1R、鋭いジャブを飛ばすメイウェザーだが、右フック一発でダウン、KO。苦労人ロックリッジが右フック一発のワンパンチKOで新王者に。あっさり沈んでしまったメイウェザー。この試合まで全勝だったが、打たれ脆さが災い。87年のレネ・アルレドンド戦まで無冠の状態が続く。)

ロッキー・ロックリッジ 12R TKO 文泰鎮
(WBA世界J・ライト級タイトル戦、1984年)
ロックリッジ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
文:右ジャブと左ストレート
(感想:ロックリッジがタイトル初防衛。挑戦者の文は東洋太平洋J・ライト級王座を獲得しているタフなサウスポー。アメリカでアジア人がどんなファイトを見せてくれるのか、といったところ。オーソドックスとサウスポーの対決。しかしながら、かみ合わない状態が続く。ロックリッジが連打し、文はジャブとストレートを使うが後手に回る。結局、ロープ際で文が連打されたところでレフェリーストップ、試合終了(ダウンシーンは無し)。ストップの後「まだできる(何故ストップするんだ)」みたいなポーズを取る文とセコンド。だったらもっと積極的に攻めればよかったのに。アジアの選手がアメリカで試合をする場合「どんなことをやってくれるのか」という感じで期待してしまうが、いまいちパッとしないことが多かった。いくら世界王者だったとしても、地元のアジアで国際的に無名の相手にタイトルを防衛したとしても所詮は「ローカル・チャンピオン」。近年は本場の米国でサプライズを起こすアジア人もいるが、ボクシングの人気自体が落ちているので何とも言えない感じもする。残念な内容だったこの試合。しかも、まだ25秒以上あるのにラウンド終了だと思った両選手がコーナーに戻って、また再開するハプニングも(4R)。)

ロッキー・ロックリッジ 9R TKO バリー・マイケル
(IBF世界J・ライト級タイトル戦、1987年)
ロックリッジ:左ジャブと左右フック
マイケル:左ジャブと左右フック
(感想:ロックリッジがIBFを獲得。リングサイドでイベンダー・ホリフィールドが観戦。王者マイケルはオーストラリアの白人。同じオーストラリアのレスター・エリスを破って王座に就いた男。1Rからマイケルが接近戦を仕掛け、打ち合いが続く。どちらかが大きくグラつくといったシーンも特になく、ロックリッジが頭をくっつけながら攻める展開。王者が8R終了で棄権。ダウンシーンは無し。ロックリッジが押し切った形で勝利。試合後、相当疲れた様子のマイケル。ボクシングマガジンにその時の写真が掲載されていたが、敗北後のマイケルの顔はまるで老人のようだった。その後、ロックリッジはトニー・ロペスに判定で敗れ、王座陥落。再戦でも敗北し、王座奪回ならず。ケン・ノートンのようなスタイルで精力的な試合ぶりだったロックリッジだが、引退後はつらい状況が続いたらしく、身体の不調により亡くなった(60歳)。)   

①「WBA World Super Featherweight Title
Roger Mayweather vs. Rocky Lockridge」
②「WBA World Super Featherweight Title
Rocky Lockridge vs. Tae-Jin Moon」
③「IBF World Super Featherweight Title
Barry Michael vs. Rocky Lockridge」

ロジャー・メイウェザー(Roger Mayweather)のページ
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バリー・マイケル(Barry Michael)のページ

ヒルベルト・ローマン(Gilberto Roman)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBC世界J・バンタム級王者。メキシコの技巧派。渡辺二郎戦、サントス・ラシアル戦、シュガー・ベビー・ロハス戦、を紹介します。

ヒルベルト・ローマン(Gilberto Roman)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ヒルベルト・ローマン(メキシコ)
身長159cm:オーソドックス(右構え)

ヒルベルト・ローマン 12R 判定 渡辺二郎
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1986年)
ローマン:左ジャブと右ストレート
渡辺:右ジャブ、カウンターの左ストレート
(感想:ローマンがタイトル獲得。テクニシャンのローマン。1980年のモスクワオリンピックではフライ級で出場(メダルは獲得ならず)。プロ転向。メキシコを中心にアントニオ・アベラル(元WBC世界フライ級王者。日本で王座獲得)らと戦ってきた。そして、世界初挑戦。渡辺はWBA王者だった時にWBC王者パヤオと統一戦を行い勝利したが、統一戦を認めないWBAは王座を剥奪(新WBA王者になったのはカオサイ・ギャラクシー)。WBC王者として連続防衛中。兵庫県伊丹市で行われた試合。ローマンがよく伸びるジャブ、ストレートでポイントを取り、渡辺のカウンター攻撃をディフェンス。どちらかが一方的に打たれるシーンもなく、大きな力の差も感じられないまま12R終了。判定は3-0。ダウンシーンは無し。ローマンが左のテクニックでコッソリ王座を奪った印象。後にローマンはナナ・コナドゥや文成吉といった規格外のハードパンチャーに屈するが、ローマンは「テクニックでコントロールできる範囲内の相手」には強い。渡辺はこれがラストファイト。再戦が無かったのが残念。)

ヒルベルト・ローマン 12R 引分 サントス・ラシアル
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1986年)
ローマン:左ジャブ、右ストレート、左フック
ラシアル:左ジャブ、右ストレート、左フック
(感想:ローマンがタイトル防衛。精力的に防衛戦を行うローマン(軽量級はファイトマネーが安いため、できるだけ多く稼ぎたかったのだと思われる)。挑戦者ラシアルは元WBA世界フライ級王者。背は低いが、パワーのある連打で日本で防衛に成功したことがある。フットワークと左ジャブを使うローマン。パワーで攻めるラシアル。どちらもスピードがあり、ディフェンスもできるため大きな波瀾が無いまま12R終了。判定はドロー、ダウンシーンは無し。プロボクシングはやっぱりリングサイドで観るもの。TV映像ではエキサイティングには見えなかった試合。ローマンとラシアルの三番勝負の第一戦は引き分け。再戦はラシアルが王座を奪って二階級制覇達成。ラバーマッチ(三戦目)は王座を取り戻したローマンにラシアルが挑戦する形で行われ、ローマンの判定勝ち。ラシアルはフライ級では強さを見せたが、J・バンタム級ではそれほど活躍できなかった。)

ヒルベルト・ローマン 12R 判定 シュガー・ベビー・ロハス
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1988年)
ローマン:左ジャブ、右ストレート、左フック
ロハス:左ジャブ、右ストレート
(感想:ローマンがタイトル防衛。挑戦者ロハスはコロンビア人。ラシアルはローマンとの再戦でWBC世界J・バンタム級タイトルを獲得したが、ロハスに敗れ、初防衛ならず。ロハスは懐かしの選手グスタボ・バリャス(初代WBA世界J・バンタム級王者)に勝って初防衛に成功したが、二度目の防衛戦でローマンに敗北。再戦で王座奪回を目指す状況。王者ローマンは直前の試合で畑中清詞を相手に防衛に成功している。ラスベガスで行われた一戦(「レナード vs. ラロンデ」の前座カード)。フットワークを使い、手数が多いローマン。ロハスはパンチはあるが狙いすぎで手数が少ない。4R、ローマンがコンビネーション攻撃(このシーンは少し見応えがあった)。判定は3-0。パンチを当てさせないローマンが先手を取り、勝利。手数が少なかったロハス。自分から負けたような試合ぶりだった。その後もローマンは防衛を続けたが、ついに規格外の選手が登場。ガーナのナナ・コナドゥ。何度もダウンを喫し、ローマンは王座を失う。意外に打たれ弱かったコナドゥ。韓国の文成吉に敗れる。文に挑戦したローマンだが、敗北。その後、自動車事故により死去。その事故が試合のダメージと関係があるのかどうかは不明。)

①「WBC World Super Flyweight Title
Watanabe Jiro vs. Gilberto Roman」
②「WBC World Super Flyweight Title
Gilberto Roman vs. Santos Laciar」
③「WBC World Super Flyweight Title
Gilberto Roman vs. Sugar Baby Rojas」

渡辺二郎(Watanabe Jiro)のページ
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サントス・ラシアル(Santos Laciar)のページ
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シュガー・ベビー・ロハス(Sugar Baby Rojas)のページ