2020年3月27日金曜日

レーロホノロ・レドワバ(Lehlohonolo Ledwaba)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

南アフリカの「石の拳」レドワバ。エルネスト・グレイ戦、マニー・パッキャオ戦、ブヤニ・ブング戦を紹介します。

レーロホノロ・レドワバ(Lehlohonolo Ledwaba)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

レーロホノロ・レドワバ(南アフリカ)
身長168cm:オーソドックス(右構え)

レーロホノロ・レドワバ 8R KO エルネスト・グレイ
(IBF世界J・フェザー級タイトル戦、2000年)
レドワバ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
グレイ:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
5R:左フックでグレイがダウン
8R:左フック、連打で2度、グレイがダウン
(感想:レドワバがタイトル防衛。「Hands of Stone(石の拳)」と呼ばれたレドワバ。デビュー当初に負けと引き分けが一つずつ。それ以降は連勝中で、南アフリカのJ・フェザー級王座、WBUのバンタム級王座を獲得、防衛。元WBA世界バンタム級王者ジョン・マイケル・ジョンソンを決定戦で破り、IBF世界J・フェザー級王座獲得。これが二度目の防衛戦となる。挑戦者のグレイはコロンビア人。ブヤニ・ブング(南アフリカ)が王者だったときにこの王座に挑戦して判定負けしており、これが同王座への二度目の挑戦となる。英国で行われた試合。戦いのスタイルが似ている両者。ジャブの打ち合い。レドワバはジャブ、グレイは左フックで勝負。5R、左フックのダブルでグレイがダウン。グレイはサウスポーにスイッチしたりするがあまり効果はなく、8Rに左フックをカウンターで食ってダウン。立ったものの連打され、ロープの外に飛び出すダウンでレフェリーが試合を止めた。レドワバの魅力が全て表現されていた試合。「バランスの良さ、パンチのキレ、連打の迫力」が印象に残った。)

マニー・パッキャオ 6R KO レーロホノロ・レドワバ
(IBF世界J・フェザー級タイトル戦、2000年)
レドワバ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
パッキャオ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
(ダウンシーン)
2R:左ストレートでレドワバがダウン
6R:左ストレートで2度、レドワバがダウン
(感想:パッキャオが二階級制覇。レドワバの六度目の防衛戦。相手は元WBC世界フライ級王者のパッキャオ。フライ級王座をKO負けで失った後、階級を一気に上げ、J・フェザー級で勝負。ラスベガス「MGM Grand」での一戦。1Rから容赦なく左ストレートをガンガン打ち込むパッキャオ。踏み込みも速い。レドワバは打ち返すが、効果はあまりない。2Rに倒されたレドワバ。6Rにも倒され、王座陥落。最後は完全KOでパッキャオがまるで台風のように猛威を振るってタイトルを奪っていった(後、六階級制覇)。レドワバは良い選手だが「上には上がある」。それがボクシング界の怖さでもあり、面白いところ。タイトルが増えてイマイチなチャンピオンも多くなったボクシング界で、レドワバのような好選手がボロボロにされてしまったのはもったいないような気もするが、それが本来のプロボクシングの世界である。)

レーロホノロ・レドワバ 12R 判定 ブヤニ・ブング
(WBU世界フェザー級王座決定戦、2002年)
レドワバ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
ブング:左ジャブと左右フック
(感想:レドワバがタイトル獲得。パッキャオに敗れたレドワバの再起戦。相手は元IBF世界J・フェザー級王者のブヤニ・ブング。レドワバにとって「先輩王者」にあたる選手。南アフリカで行われた同国人同士の新旧対決。どんな内容になるか? 似たような戦い方で、(映像で見た感じでは)見た目も似ている両者。速いジャブ・連打の応酬でクリーンなファイト。実力的にはほぼ互角だが、若干の「連打の勢いの差」が。判定は3-0でレドワバ。ダウンシーンは無し。南アフリカの黒人選手らしいスピーディーな試合だった。その後、レドワバはブランク。カムバックしたが、連敗することも。引退後は何をしていたのかは知らないが、2021年、新型コロナウイルスにより49歳で死去。)

①「IBF World Super Bantamweight Title
Lehlohonolo Ledwaba vs. Ernesto Grey」
②「IBF World Super Bantamweight Title
Lehlohonolo Ledwaba vs. Manny Pacquiao」
③「WBU Featherweight Title
Lehlohonolo Ledwaba vs. Vuyani Bungu」

ブヤニ・ブング(Vuyani Bungu)のページ

ドノバン・ラドック(Donovan "Razor" Ruddock)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

「スマッシュ」が武器のヘビー級ハードパンチャー、ラドック。レジー・グロス戦、ジェームズ・ブロード戦、ジェームス・スミス戦、マイケル・ドークス戦を紹介します。

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ドノバン・ラドック(カナダ)
身長191cm:オーソドックス(右構え)

ドノバン・ラドック 2R TKO レジー・グロス
(ヘビー級、1988年)
ラドック:左ジャブ、右ストレート、左フック
グロス:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
2R:右ストレートでグロスがダウン
(感想:ジャマイカ生まれのラドック。その後、カナダに移住。16歳でボクシングを始め、アマチュアでの試合数は少ないがカナダのタイトルを獲得。プロ転向。二線級の相手に敗北する失態を演じたこともあったが、ラリー・ホームズとのスパーリングで評価を上げ、マイク・ウィーバーに勝利したり、カナダヘビー級タイトルを獲得したり。ニックネームは「Razor」。「レーザー光線」ではなく「カミソリ」のこと。「切れ味鋭いパンチ」を形容したものだが、パワーも相当なもの。グロスはデビューから連戦連勝のホープだったが(後のIBF世界L・ヘビー級王者チャールズ・ウイリアムスを1Rで倒した星も含まれる)、トップどころには敵わず、マイク・タイソンには1RでKO負け。ただし、タフ男のバート・クーパーを仕留めており、実力はある。「マイク・タイソン vs. マイケル・スピンクス」の大一番のアンダーカードとして行われた試合。にもかかわらず、リングサイドはガラガラ(観ればいいのにもったいない。リングサイドに座るような連中はメインにしか興味がないのか? ボクシングを知らない連中だが、高価なチケットを買ってくれる「上客」だから仕方がない)。ジャブと得意の左フック「スマッシュ」で攻撃するラドック。グロスも右フックを決めるシーンを見せるが、2Rに右ストレートでダウンを食い、連打を浴びてレフェリーストップ。勢いでラドックが圧勝。結果は妥当なところか。グロスはその後、凶悪犯罪を起こし、これが最後の試合となった。)

ドノバン・ラドック 1R TKO ジェームズ・ブロード
(ヘビー級、1988年)
ラドック:左ジャブ、右ストレート、左フック
ブロード:左ジャブ
(感想:ブロードもまたレジー・グロスのようにデビューから連戦連勝のホープだった男(後のWBA世界ヘビー級王者ジェームズ・ボーンクラッシャー・スミスをKOした星も含まれる)。マービス・フレージャーに初黒星。北米ヘビー級タイトルを獲得したが、ティム・ウィザスプーンにKO負けで、王座陥落。トニー・タッカー、フランチェスコ・ダミアニ、グレグ・ペイジを相手に三連敗。直前の試合ではジョニー・デュプロイ(ダミアニと空位のWBO世界ヘビー級王座を争って、あっけなくKO負け)にKO負けするなど、いいところなし。フットワークとジャブのラドック。飛び込んでの「スマッシュ」。ロープ際で連打してレフェリーストップ。ダウンシーンは無し。何もできなかったブロード。大きな体なのに。残念。)

ドノバン・ラドック 7R KO ジェームス・スミス
(ヘビー級、1989年)
ラドック:左ジャブ、右ストレート、左フック
スミス:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
2R:右フックでラドックがダウン
7R:左フックでスミスがダウン
(感想:元WBA王者の「ボーンクラッシャー」スミス。ゴツい身体をしており、腕力が武器。マイク・タイソンに不甲斐ない負け方をしたことがあるが、本来そんな負け方をするような選手ではない。そんなスミスのハードパンチを警戒して、フットワークとジャブを使うラドック。得意の強打を当てようと狙っていたスミスが2Rにダウンを奪う(ラドックが横倒しになる派手なダウンだった)。クリンチでピンチを脱出したラドックは逆にパワーでスミスを追い込む。動きにキレが無いスミス。7Rに「スマッシュ」を食って完全KO。ラドックが元王者を豪快に逆転KO。あのタフなスミスがこんな倒され方をするとは、という衝撃的な結末だった。)

ドノバン・ラドック 4R KO マイケル・ドークス
(WBAインターコンチネンタル・ヘビー級タイトル戦、1990年)
ラドック:左ジャブ、右ストレート、左フック
ドークス:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
4R:左フックでドークスがダウン
(感想:ドークスもまた元WBA王者。回転の速い連打が武器。しかしながら、「パンチが軽い」という評価も。ゴング前に睨み合う両者。左フックを狙うラドック。回転の速い連打を使うドークス。4R、左を食ってロープ際まで後退したドークスにラドックが左フック。ほぼノーガード状態で相手の一番得意なパンチを全力で打たれたドークスは前のめりにダウンして立てなかった。ラドックがまたしても元王者を豪快KO。ヘビー級ボクシング史上に残る衝撃のシーン。ボクシングが恐いのは「手加減無しで全力でパンチを打つ・打たれる」ところ。ガードできない状態でパンチを打たれるのを見ると「早めにストップして欲しい」と思うことがよくあるが、これはそんな試合だった。その後、ラドックはマイク・タイソンとの事実上の「ヘビー級ナンバーワン」を決める試合で二連敗。それでも実力に対する評価が下がることはなかったが、レノックス・ルイス、トミー・モリソンに豪快なKO負け。世界を獲得することはできなかった。)

①「Heavyweight
Donovan Ruddock vs. Reggie Gross」
②「Heavyweight
Donovan Ruddock vs. James Broad」
③「Heavyweight
Donovan Ruddock vs. James Smith」
④「WBA Inter-Continental Heavyweight Title
Michael Dokes vs. Donovan Ruddock」

マイク・タイソン("Iron" Mike Tyson)のページ
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レノックス・ルイス(Lennox Lewis)のページ
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トミー・モリソン(Tommy "The Duke" Morrison)のページ

2020年3月25日水曜日

金喆鎬(Kim Chul Ho)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

韓国のラッシャー、金喆鎬。渡辺二郎戦、ジャッカル丸山戦、石井幸喜戦を紹介します。

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金喆鎬(韓国)
身長168cm:オーソドックス(右構え)

金喆鎬 15R 判定 渡辺二郎
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1981年)
金:左ジャブ、右ストレート、左フック
渡辺:右ジャブ、左ストレート、右フック
(感想:金がタイトル防衛。韓国の金。国内王座(J・バンタム級)を獲得するなど、戦績が良く、初の海外試合で実力者ラファエル・オロノをKOしてWBC世界J・バンタム級タイトル獲得。これが初防衛戦。渡辺は大阪の選手。これまで全勝。日本拳法の経験があり、パンチが強い。ソウルで行われた一戦。ジャブの打ち合いと接近戦で両者一歩も引かず。サウスポーの渡辺は左ストレートのカウンター。金は接近して連打。パンチを当てる巧さは渡辺、手数は金、といったところ。15R終了。判定は3-0(ダウンシーンは無し)。ボクシング界には世界王者を挑戦者より上の存在と見なす習慣がある。互角の場合、ポイントを取るのは王者。挑戦者が勝つには王者を上回る攻撃をする必要がある。渡辺は負けたが、その後、WBA王座、次いでWBC王座を獲得。) 

金喆鎬 13R KO ウイリー・ジェンセン
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1981年)
金:左ジャブ、右ストレート、フック
ジェンセン:左ジャブ、右ストレート、フック
(ダウンシーン)
13R:ボディ連打でジェンセンがダウン
(感想:金がタイトル防衛。二度目の防衛戦。挑戦者ジェンセンはネバダ州ラスベガスの黒人。ニックネームは「Birdlegs」(「鳥の足」? フットワークのことだろうか?)。デビューから連勝。ルペ・ピントールにKO負けで初黒星。全米フライ級王座獲得。グティ・エスパダス(後、WBA世界フライ級王座獲得)、ラファエル・オロノ(WBC世界J・バンタム級王座戦)とドロー。なかなかの実績を引っさげて、二度目の世界挑戦。韓国・釜山での一戦。金が前傾姿勢でダッキングしながらジャブ連打。接近してフック、ボディ連打。ジェンセンは左のガードを下げた構えから左ジャブ、左フック。似たタイプであるが、金は接近戦、ジェンセンは距離を取って戦いたい様子。そのためジェンセンはクリンチが目立つ。金が右ストレート、ボディ連打で攻勢。ジャブ、右カウンターを食うが、構わず前進。ジェンセンは左フックに巧さがあるが、打たれてさらにクリンチを多用。13R、ボディ連打でジェンセンがついにダウン。立てず、KO。金がタフネス&連打で勝利。打たれるシーンもあったが、「勝てば問題ない」というのが金のボクシングのようだ。ジェンセンは良い選手だが、相手のしつこさに負けた。その後のジェンセン。数試合行ったが、不調。ラストファイトはカオサイ・ギャラクシーにKO負けだった。)

金喆鎬 9R TKO ジャッカル丸山
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1981年)
金:左ジャブ、右ストレート、左フック
丸山:左ジャブと左右フック
(感想:金がタイトル防衛。三度目の防衛戦。挑戦者は「根性の男」丸山。グスタボ・バリャス(後、初代WBA世界J・バンタム級王者に。来日し、渡辺二郎に挑戦したことも)には負けてしまったが、日本J・バンタム級王座を防衛中。釜山で行われた一戦。ジャブと接近戦で打ち合い続ける両者。しかし、最後は丸山のキズが悪化してTKO(ダウンシーンは無し)。この試合でもねばり強かった金。細かいパンチを地道に打ち続けた。丸山の右フックも良かったが、ジャブとパンチの正確さは金の方が上だった。その後も丸山は日本J・バンタム級王座戦の中心選手として活躍。)

金喆鎬 8R KO 石井幸喜
(WBC世界J・バンタム級タイトル戦、1982年)
金:左ジャブ、右ストレート、左フック
石井:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
3R:右フックで金がダウン
6R:左フックで石井がダウン
7R:右フックで石井がダウン
8R:連打で石井がダウン
(感想:金がタイトル防衛。四度目の防衛戦。挑戦者はWBA世界フライ級1位の石井。これまで全勝だが、やや打たれ弱いところがあり、階級も一つ下。大邱(テグ)で行われた一戦。1Rから積極的に攻める金、応戦する石井。3Rに右フックで金がダウン。その後、金は休むことなく連打で報復。ダウンを繰り返した石井は8Rにレフェリーストップ。共に一発で倒すタイプの選手ではないが、3Rと6Rのダウンシーンは迫力があった。その後の二人。石井は日本王座戦に勝てず、引退。金はラウル・バルデスとドローで五度目の防衛に成功したが、オロノとの再戦でKO負け、王座陥落。約一年後の再起戦にも敗れて引退。引退後はトレーナーに。ボクシング中継でよく見かける顔となった。)

①「WBC World Super Flyweight Title
Kim Chul Ho vs. Watanabe Jiro」
②「WBC World Super Flyweight Title
Kim Chul Ho vs. Willie Jensen」
③「WBC World Super Flyweight Title
Kim Chul Ho vs. Jackal Maruyama」
④「WBC World Super Flyweight Title
Kim Chul Ho vs. Ishii Koki」

渡辺二郎(Watanabe Jiro)のページ
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ラファエル・オロノ(Rafael Orono)のページ

ブルース・セルドン(Bruce Seldon)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBA世界ヘビー級王者。ヘビー級の筋肉マン、セルドン。ホセ・リバルタ戦、トニー・タッカー戦、マイク・タイソン戦を紹介します。

ブルース・セルドン(Bruce Seldon)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ブルース・セルドン(アメリカ)
身長187cm:オーソドックス(右構え)

ブルース・セルドン 4R TKO ホセ・リバルタ
(ヘビー級、1991年)
セルドン:左ジャブと左右フック
リバルタ:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
1R:右フックでセルドンがダウン
3R:左右フックでリバルタがダウン
(感想:「筋肉マン」のセルドン。ニュージャージー州アトランチックシティ出身。少年院を出た後、ボクシングを始める。アマチュアでの試合数は少ないが、州大会で優勝している。プロ入り後、早い回で相手をKOする戦いぶりから「The Atlantic City Express(超特急)」と呼ばれるようになった。ここまで全勝。オジー・オカシオ(元WBA世界クルーザー級王者)、デビッド・ベイ(ラリー・ホームズのIBF王座に挑戦、敗北)らに勝利している。リバルタは背の高いキューバ人。マイク・タイソンに10RでTKO負けした試合で日本のファンにもおなじみ。直前の試合では元王者ティム・ウィザスプーンに2-0で惜しくも敗れている。1R、いきなりの右フックでセルドンがダウン。スクッと立ち上がって、まるで何事もなかったかのようにリバルタを猛攻。3R、セルドンの攻撃でロープにうつ伏せの体勢でもたれかかったリバルタ。レフェリーが体勢を整えさせなかったため、セルドンが攻撃を続行。ダウンしたリバルタのダメージは大きく、3R終了で棄権。ゴツい体の割りには意外なほど打たれ弱いセルドン。しかしパワーは一流。)

ブルース・セルドン 8R TKO トニー・タッカー
(WBA世界ヘビー級王座決定戦、1995年)
セルドン:左ジャブと左右フック
タッカー:左ジャブ、右ストレート、左フック
(感想:セルドンがタイトル獲得。リバルタ戦の後、後に世界王者になるオリバー・マッコールにTKO負けしたセルドン。続くリディック・ボウ戦でもKO負け。ジェシー・ファーガソンと空位のIBFインター王座(ヘビー級)を争って獲得するなど再浮上。トニー・タッブス(マイク・タイソンと東京ドームで戦った元WBA王者)には敗れたが、インター王座戦で勝ち続け、タッカーとの王座決定戦に出場、世界初挑戦。タッカーは元IBF王者。この選手もタイソンとの試合で有名。バスター・ダグラスを下して王者になったが、タイソンに敗北。マネージメントの関係でリングから遠ざかってしまい、全盛期を無駄に過ごしてしまったが、王座決定戦に出場することとなった。シーザース・パレスの屋外リングで行われた一戦。速いジャブの打ち合い。思い切ったフック攻撃をするセルドン。タッカーは3Rに右フックでセルドンをグラつかせたが、左目の腫れが悪化して7R終了後に棄権。ダウンシーンは無し。タッカーはタイソンに負けてIBFタイトルを失った後の長いブランクにより体が重くなり、動きにキレが無くなっていた。本来のタッカーが見たい人には「タイソンに負ける前の試合」をオススメしたい。)

マイク・タイソン 1R KO ブルース・セルドン
(WBA世界ヘビー級タイトル戦、1996年)
セルドン:左ジャブと左右フック
タイソン:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
1R:右フック、左フックで2度、セルドンがダウン
(感想:タイソンがタイトル奪回。初防衛戦でジョー・ヒップをTKOで下したセルドン。二度目の防衛戦の相手はあのタイソン。タイソンは事件を起こして刑務所に入ったが、出所後、フランク・ブルーノをKOしてWBC王座奪回。次の狙いはセルドンのWBA王座。かつて自身が持っていた王座を取り戻すつもり。しかし、WBCがタイソンに対し、レノックス・ルイスと防衛戦を行うよう指令。タイソンはセルドンと試合する契約をすでにしていたため、WBC王座を返上。本来なら統一戦になるはずだったが、セルドンのWBA王座のみが懸けられることとなった。ラスベガス「MGM Grand」での一戦。1R、強打でセルドンを追い回すタイソン。あっけなく倒されたセルドンは二度目のダウンから立ち上がったが、足がフラついており、レフェリーにストップされた。ある程度予想されていた結末だが、実際に観るとなかなか衝撃的なKO劇。セルドンは決して弱い選手ではなかったが・・・。リディック・ボウがWBC王座を剥奪されて以来、分裂しているヘビー級王座(王者としては微妙な選手も)。この試合で統一されることはなかったが、事実上のナンバーワンが決まった形(タイソンの次の相手はイベンダー・ホリフィールド)。セルドンはその後、事件を起こしてタイソン戦が事実上のラストファイト。ブランク後にカムバックしてリングに上がり続けたが、世界戦を行うことはなかった。最後の試合は2009年。公式には引退をしていないが、ボクサーになった息子の指導を熱心に行っているという。)

①「Heavyweight
Bruce Seldon vs. José Ribalta」
②「WBA World Heavyweight Title
Bruce Seldon vs. Tony Tucker」
③「WBA World Heavyweight Title
Bruce Seldon vs. Mike Tyson」

トニー・タッカー(Tony "TNT" Tucker)のページ
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リディック・ボウ(Riddick Bowe)のページ
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マイク・タイソン("Iron" Mike Tyson)のページ

2020年3月20日金曜日

フランク・ブルーノ(Frank Bruno)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

英国ヘビー級のスター、ブルーノ。ゲリー・コーツィー戦、オリバー・マッコール戦、マイク・タイソン戦を紹介します。

フランク・ブルーノ(Frank Bruno)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

フランク・ブルーノ(イギリス)
身長191cm:オーソドックス(右構え)

フランク・ブルーノ 1R KO ゲリー・コーツィー
(ヘビー級、1986年)
ブルーノ:左ジャブと右ストレート
コーツィー:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
1R:右ストレート、右フックで2度、コーツィーがダウン
(感想:ロンドン生まれのブルーノ(見た目が「ハナ肇」に似ている)。デビュー以来、21連続KO勝ちでアメリカでも話題に。しかし、ジェームズ・ボーンクラッシャー・スミスの凶暴なフック強打で撃沈、初黒星。カムバックし、再び連続KO勝利。コーツィーは南アフリカの選手で元WBA王者。右パンチが強い選手だが、あまり器用なタイプではない。ロンドン「ウェンブリー・アリーナ」で行われた一戦。伸びるジャブを使うブルーノ。右ストレートが「ガツン」と当たってタフ男コーツィーがダウン。さらにダウンを追加して完全KO。上半身がロープの外に出るほどの強烈な倒れ方をしたコーツィーはほぼ何もできなかった。豪快なKO勝ちをしたブルーノ。しかし、動きに「上半身の固さ」を感じた。ブルーノの次の試合はティム・ウィザスプーンの持つWBA世界ヘビー級王座への挑戦。)

フランク・ブルーノ 12R 判定 オリバー・マッコール
(WBC世界ヘビー級タイトル戦、1995年)
ブルーノ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
マッコール:左ジャブと左右フック
(感想:ブルーノがタイトル獲得。ウィザスプーンに大きなフックで「ドカドカ」打たれて世界王座を獲得できなかったブルーノ。マイク・タイソンの統一世界ヘビー級王座に挑戦した試合ではタイソンをグラつかせたが、TKO負け。レノックス・ルイスとのWBC王座を懸けた「英国対決」にもTKO負け。実力者に勝ちながらも世界は獲れない、もどかしい状況。ルイスがマッコールに番狂わせのKO負け。四度目の世界挑戦のチャンスを得た(競争が激しいヘビー級で四度の挑戦は異例)。マッコールは器用なタイプではないが、ルイスをKOするほどの腕力の持ち主。ロンドン「ウェンブリー・スタジアム」で行われた一戦。ブルーノがジャブを使い、マッコールの接近に連打で応戦。5Rにはマッコールの右フックがヒット。ポイントで劣勢のマッコールは最終ラウンドに打って出るが、時すでに遅し。判定は3-0でブルーノ(ダウンシーンは無し)。地元・英国のファンが大喜び。試合自体はゴツゴツした感じでクリンチも多く、それほど良い試合とは思えなかったが、ブルーノの四度目の挑戦が実ってよかった、といったところ。リングサイドではナイジェル・ベン(イギリス)が立ちっぱなしでブルーノに声援を送っていた(後ろの客はほとんど試合が見えなかったのでは?)。チャンピオンのマッコールよりもベンの方が存在感があったような気がする。)

マイク・タイソン 3R TKO フランク・ブルーノ
(WBC世界ヘビー級タイトル戦、1996年)
ブルーノ:左ジャブと左右フック
タイソン:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
3R:左右フックでブルーノがダウン
(感想:タイソンがタイトル奪回。ブルーノの初防衛戦はタイソンとの再戦。事件を起こして刑務所に入っていたタイソンが復帰。ブルーノの王座を狙う。ラスベガス「MGM Grand」での大一番。突進するタイソン。ブルーノは応戦・クリンチ。3Rの乱打でブルーノがダウン。それと同時にレフェリーストップ。ブルーノが再戦も敗北。前回のタイソン戦の時より上半身がゴツくなってモコモコした体になっていたが、パワーは感じられなかった。この試合で引退したブルーノ。引退後は精神的なトラブルを抱えているらしい。ボクサー時代は「大物感」があっただけに、プライベートが不安定なのは残念。)

①「Heavyweight
Frank Bruno vs. Gerrie Coetzee」
②「WBC World Heavyweight Title
Oliver McCall vs. Frank Bruno」
③「WBC World Heavyweight Title
Frank Bruno vs. Mike Tyson」

ティム・ウィザスプーン("Terrible" Tim Witherspoon)のページ
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オリバー・マッコール(Oliver McCall)のページ
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マイク・タイソン("Iron" Mike Tyson)のページ

ジェームス・マクガート(James "Buddy" McGirt)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

ウェルターのテクニシャン、マクガート。ハワード・デービス戦、サイモン・ブラウン戦、パーネル・ウィテカー戦を紹介します。

ジェームス・マクガート(James "Buddy" McGirt)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ジェームス・マクガート(アメリカ)
身長169cm:オーソドックス(右構え)

ジェームス・マクガート 1R KO ハワード・デービス
(IBF世界J・ウェルター級タイトル戦、1988年)
マクガート:左ジャブと左右フック
デービス:左ジャブと右ストレート
(ダウンシーン)
1R:右フックでデービスがダウン
(感想:マクガートがタイトル防衛。ニューヨーク出身のマクガート。この階級の選手にしては小柄だが、シャープなパンチとディフェンスで勝ってきた男。フランキー・ウォーレンを判定で破って空位だったこの王座を獲得。これが初防衛戦。挑戦者デービスはモントリオールオリンピック(1976年)・ライト級金メダリスト。しかしながら、プロでは二度世界挑戦したが、未だ無冠。モントリオールで金メダルだったシュガー・レイ・レナードやマイケル・スピンクスらと比べると寂しい状況。左ジャブとフットワークを使うデービス。マクガートは強打しようと左フックで攻める。ロープ際でマクガートの思い切った右フックがクリーンヒット。一撃でKO。「テクニック」のイメージがあるマクガートが実力者を豪快にKO。デービスは気の毒だが、これが勝負の世界。マクガートの次の防衛戦の相手はロサンゼルスオリンピック(1984年)・フェザー級金メダリスト、メルドリック・テーラー。)

ジェームス・マクガート 12R 判定 サイモン・ブラウン
(WBC世界ウェルター級タイトル戦、1991年)
マクガート:左ジャブと左右フック
ブラウン:左ジャブ、右ストレート、左右フック
(ダウンシーン)
10R:左フックでブラウンがダウン
(感想:マクガートが二階級制覇。メルドリック・テーラーに敗れたマクガート。再起して連勝中。ブラウンは恐るべきパワーファイター。比較的ゆっくりした動きから伸びとパワーのあるパンチを豪快に振るって相手をKOするのがパターン。IBF王者だったが、盟友モーリス・ブロッカーを破ってWBC王座も獲得。IBFを返上し、この防衛戦。ラスベガス「Mirage」で行われた一戦。パワーで勝るブラウンがジャブで前に出る。マクガートはフットワークを使ってジャブ、連打で応戦。10R、左フックがきれいに決まり、ブラウンがダウン。結局、ブラウンはマクガートを捕らえることができず、判定は3-0。マクガートが器用に勝利。パワーで上回っているにもかかわらず負けたブラウンは悔しかったのでは? 「ハグラー vs. レナード」のような雰囲気を感じた試合内容だった。)

パーネル・ウィテカー 12R 判定 ジェームス・マクガート
(WBC世界ウェルター級タイトル戦、1993年)
マクガート:左ジャブ、右ストレート、左右フック
ウィテカー:右ジャブ、左ストレート、左右フック
(感想:ウィテカーが三階級制覇。挑戦者の「スウィートピー」ウィテカー(「スウィートピー」というのは花のことではなく、「豆のように身体が小さいが素晴らしい動きをする選手」の意味)。サウスポースタイルで世界ライト級王座を統一し、強打者ラファエル・ピネダを下して二階級制覇。個性的でトリッキーな動きで目立っている選手だが、鋭いジャブ、一撃で相手をKOできるほどの左ストレート、突き上げるような左ボディアッパーを持つ実力派。ニューヨーク「マジソン・スクエア・ガーデン」で行われた注目の技巧派対決。試合の方は、マクガートが手数が少な目で押される展開。パンチの正確さとディフェンスを見せるウィテカー。判定は3-0。ダウンシーンは無し。ウィテカーのパンチはそんなに強かったのだろうか? なかなか前に出れないマクガートに物足りなさを感じた。ジャブをもっと多く出していれば逆の判定になっていたかも。再戦も判定でウィテカー。マクガートは肩を痛めることが多かったということだが、それは言い訳にはならない。ただ、ベストコンディションだったらどんな試合になっていただろうか? とも思う。その後もマクガートはリングに上がり続けたが、世界王座に返り咲くことはできず。引退後はトレーナーに。若い選手たちのセコンドにつく姿はボクシング中継ではおなじみの光景となった。)

①「IBF World Super Lightweight Title  
James McGirt vs. Howard Davis」
②「WBC World Welterweight Title
Simon Brown vs. James McGirt」
③「WBC World Welterweight Title
James McGirt vs. Pernell Whitaker」

ハワード・デービス・ジュニア(Howard Davis Jr.)のページ
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メルドリック・テーラー(Meldrick Taylor)のページ
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サイモン・ブラウン(Simon Brown)のページ
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パーネル・ウィテカー(Pernell "Sweet Pea" Whitaker)のページ

2020年3月18日水曜日

アントニオ・アベラル(Antonio Avelar)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

フライ級のハードパンチャー、アベラル。大熊正二戦、金泰式戦、ウィルフレド・バスケス戦を紹介します。

アントニオ・アベラル(Antonio Avelar)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

アントニオ・アベラル(メキシコ)
身長163cm:オーソドックス(右構え)

アントニオ・アベラル 7R KO 大熊正二
(WBC世界フライ級タイトル戦、1981年)
アベラル:左ジャブ、右ストレート、左右フック
大熊:右ジャブ、左ストレート、左右フック
(ダウンシーン)
7R:左右フックで大熊がダウン
(感想:アベラルがタイトル獲得。メキシカンのアベラル。強豪ひしめくメキシコフライ級でフレディー・カスティーリョ(後、WBC世界フライ級王座獲得)、ガブリエル・ベルナル(後、日本で小林光二を2RでKOしてWBC世界フライ級王座獲得)に判定負け。WBC世界フライ級王者ミゲル・カントに挑戦したときは判定負け。厚い壁に阻止されてきたが、北米フライ級王座を獲得し、この二度目の世界挑戦。王者の大熊はこれが二度目の王座。奪回した王座の四度目の防衛戦。茨城県水戸市で行われた一戦。フットワークを使って左ストレートを狙うサウスポーの大熊。左右フックで前に出るアベラル。3R、大熊の左ストレートがヒット。7R、両者ともエキサイトした感じで打撃戦となり、強烈な左右フックを浴びた大熊がダウン。立てなかった。アベラルが王者を豪快にKO。大熊はジャブで距離を取って打ち合いを避けるべきだったと思うが、それができないほどアベラルの圧力は凄かったのだろう。)

アントニオ・アベラル 2R KO 金泰式
(WBC世界フライ級タイトル戦、1981年)
アベラル:左ジャブ、右ストレート、左右フック
金:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
2R:左フックで金がダウン
(感想:アベラルがタイトル初防衛。金は元WBA世界フライ級王者。今度はWBCを狙う。ソウルで行われた強打者同士の一戦。共にアグレッシブ。1Rから左右フックで打ち合う。金の左ボディフックはなかなかの迫力。2R、アベラルの強打で横を向いた金。そこにアベラルが左フックをぶち込む。完全にKOされた金はダメージが心配された。同じように打ち合ったにもかかわらず、タフな金に豪快に勝利したアベラル。その底抜けのパンチ力はかなりの衝撃だった。)

アントニオ・アベラル 8R TKO ウィルフレド・バスケス
(バンタム級、1986年)
アベラル:左ジャブ、右ストレート、左右フック
バスケス:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
5R:左フックでバスケスがダウン、右フックでアベラルがダウン
8R:連打でバスケスがダウン
(感想:プルデンシオ・カルドナ(コロンビア)に何と1RでKOされてWBC世界フライ級タイトルを失ったアベラル。その後、後に世界王者になるヒルベルト・ローマンらと対戦しながら、このバスケス戦。バスケスはプエルトリコの選手で、後に三階級を制覇する豪打の男(日本でも試合をし、説明不要なほどの有名選手)。マイアミでの一戦。ゴング前、WBC世界バンタム級王者のミゲル・ロラがリングに上がって挨拶。1Rから激しい打ち合い。あのバスケスがフットワークで距離を取ろうとするほどアベラルがパワフルな攻撃。5R開始早々、左フックでバスケスがダウン。右フックで逆にアベラルがダウン。その後はバスケスが後退するシーンも見られ、8Rのダウン。立ったがストップされた。82年にフライ級王座を失い、今や「古豪」と言ってもいいアベラルがバンタムでも通用するパワーを見せ、激戦を制した。この勝利によりアベラルはロラに挑戦。しかし、KO負け。それが最後の試合となった)

①「WBC World Flyweight Title
Oguma Shoji vs. Antonio Avelar」
②「WBC World Flyweight Title
Antonio Avelar vs. Kim Tae-shik」
③「Bantamweight
Antonio Avelar vs. Wilfredo Vazquez」

大熊正二(Oguma Shoji)①のページ
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金泰式(Kim Tae-shik)のページ
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ウィルフレド・バスケス(Wilfredo Vazquez)のページ

ラウル・ペレス(Raul Perez)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

長身のバンタム級、ペレス。ミゲル・ロラ戦、ガビー・カニザレス戦(再戦)、ルイス・メンドサ戦を紹介します。

ラウル・ペレス(Raul Perez)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ラウル・ペレス(メキシコ)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

ラウル・ペレス 12R 判定 ミゲル・ロラ
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1988年)
ペレス:左ジャブ、右ストレート、左フック
ロラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
(感想:ペレスがタイトル獲得。バンタム級としては異例の長身選手、ペレス。ニックネームは「jibaro(ヒバロ)」(「ヒバロ人の」「田舎の」といった意味がある)。デビュー以来、一つの黒星を除いてキレイに白星を重ねてきた。元WBA王者のガビー・カニザレス、ウィルフレド・バスケスに勝利。そしてこの世界初挑戦。王者ロラはヒゲがよく似合うダンディーなコロンビア人で、これまで全勝の安定王者。ラスベガスで行われた一戦(「フリオ・セサール・チャベス vs. ホセ・ルイス・ラミレス」のWBA・WBC世界ライト級統一戦のアンダーカード)。似たようなタイプ同士。しかしながら身長差が。両者ジャブを打ち合うが、懐が深いペレスにロラは思うようにパンチを当てられない。長いリーチでの左フックボディ打ちが印象的なペレス。足を使うロラをペレスが追うパターンで12R終了。判定は3-0でペレス。ダウンシーンは無し。同じようなスタイルならリーチが長い方が有利、といった結末。ロラはこれが初黒星。「安定王者」も負けるときは意外なほどあっけなく負けることはよくある。)

ラウル・ペレス 12R 判定 ガビー・カニザレス
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1990年)
ペレス:左ジャブ、右ストレート、左フック
カニザレス:左ジャブと左右フック
(感想:ペレスがタイトル防衛。四度目の防衛戦。挑戦者は元WBA世界バンタム級王者のハードパンチャー、カニザレス。「兄弟ボクサー」で弟オーランドはIBF王者(最終的に「世界バンタム級王座連続防衛」世界記録を更新)。これは再戦(初戦はペレスがTKO勝ち)。カニザレスとしては自慢の強打で雪辱と世界王座返り咲きを果たしたいところ。カリフォルニア「グレート・ウェスタン・フォーラム」で行われた試合。ゴング前、映画『ベストキッド』で有名なパット・モリタがアメリカ国歌斉唱。強打しようとするカニザレスにジャブ・連打で応戦するペレス。小柄なカニザレスにペレスが細かい連打をまとめてポイントを取っていく。判定は3-0。ダウンシーンは無し。ペレスが手堅く勝利。全盛を過ぎてしまったか、カニザレスにあまりパワーが感じられなかったのが残念。しかし、後、ミゲル・ロラを決定戦でKOし、WBO王座を獲得。)

ラウル・ペレス 12R 判定 ルイス・メンドサ
(WBA世界J・フェザー級タイトル戦、1991年)
ペレス:左ジャブ、右ストレート、左フック
メンドサ:左ジャブと左右フック
(感想:ペレスが二階級制覇。軽打のグレグ・リチャードソンに判定負けして王座を失ったペレス。階級を上げ、次のステージへ。王者メンドサはコロンビアの選手(ペレスはバンタムのタイトルを獲ったときの相手ロラもコロンビア)。やや打たれ弱いが、シャープなパンチを持っている。「グレート・ウェスタン・フォーラム」で行われたペレスの再起戦。ボクサータイプ同士。回転の速い連打で手数が多いペレス。メンドサは力強いがやや力んだ感じで、大きなパンチが時折ヒットするものの空転するシーンが多い。判定は2-1でペレス。ダウンシーンは無し。「パワーを込めたパンチ」よりも「細かいパンチの積み重ね」が評価された試合。ペレスの戦い方は良く言えば「安定していて手数が多い」、悪く言えば「軽い」といったところ(今回紹介した三試合ではダウンシーンが一つもなかった)。二階級制覇を達成したペレスだが、初防衛戦でかつて勝利しているウィルフレド・バスケスに3RでKO負け、王座陥落。ヘナロ・エルナンデスのWBA世界J・ライト級タイトルに挑戦したが、強烈なボディを食らってKO負け。178cmもあるペレスはバンタム級時代はかなり減量がキツかっただろうが、上の階級ではパワー不足。階級を上げてパワーを発揮する選手もいるが、ペレスはそういうタイプではなかった。)

①「WBC World Bantamweight Title
Miguel Lora vs. Raul Perez」
②「WBC World Bantamweight Title
Raul Perez vs. Gaby Canizales」
③「WBA World Super Bantamweight Title
Luis Mendoza vs. Raul Perez」

ミゲル・ロラ(Miguel "Happy" Lora)のページ
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ガビー・カニザレス(Gaby Canizales)のページ
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グレグ・リチャードソン(Greg Richardson)のページ
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ルイス・メンドサ(Luis Mendoza)のページ
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ヘナロ・エルナンデス(Genaro Hernandez)のページ

2020年3月14日土曜日

ミゲル・ロラ(Miguel "Happy" Lora)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBC世界バンタム級王者。ウィルフレド・バスケス戦、アルバート・ダビラ戦(初戦・再戦)、アントニオ・アベラル戦を紹介します。

ミゲル・ロラ(Miguel "Happy" Lora)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ミゲル・ロラ(コロンビア)
身長168cm:オーソドックス(右構え)

ミゲル・ロラ 12R 判定 ウィルフレド・バスケス
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1986年)
ロラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
バスケス:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
2R:左フックでバスケスがダウン
4R:左フックでロラがダウン
(感想:ロラがタイトル初防衛。「ヒゲの王者」ロラはコロンビア・モンテリア出身(ダンディーなイメージ)。アマチュアからプロへ。ダニエル・サラゴサを判定で下して王座奪取。これが初防衛戦で、これまで全勝。挑戦者バスケスは後にハードパンチで猛威を振るい、三階級制覇するプエルトリカン。どんな試合をするか? マイアミでの一戦。フットワークとジャブで距離を取るロラ。バスケスは左右フックで前進。先にダウンを奪って勢いに乗るロラだが、逆にダウン。それでも危険な打ち合いに応じるロラ。バスケスの強打を食って後退するシーンも。最終ラウンド終了時、共に「自分が勝った」といった感じで両手を上げて勝利をアピール。判定は小差ながら3-0でロラ。映像で見た感じではバスケスのパワーが勝っていたように見えた。)

ミゲル・ロラ 12R 判定 アルバート・ダビラ
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1986年)
ロラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
ダビラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
(感想:ロラがタイトル防衛。三度目の防衛戦の相手は元王者ダビラ(テキサス州オルトン出身)。決定戦でWBC王者になったが、相手のキコ・ベヒネスが死亡する事故。防衛に成功したが、負傷により王座剥奪(かなりの苦労人)。一発でKO勝ちするような派手さはないが、地道な攻撃が武器。ロラを破って王座に返り咲きたいところ。コロンビア・バランキージャでの一戦。フットワークとジャブで距離を取るロラ。危険なパンチを持つダビラは前進するが、ロラが打ち合わないため空振りが多い。12Rに打ち合いがあったが、全般的に「ダビラの攻撃をかわしてロラがカウンターを取る」パターン。判定は3-0(ダウンシーンは無し)。あまりエキサイティングな試合ではなかった感じだったが、右目が腫れていたように、ロラにとって楽な試合ではなかった。「作戦勝ち」といったところ。後、両者はこの王座を懸けて再戦。)

ミゲル・ロラ 4R TKO アントニオ・アベラル
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1987年)
ロラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
アベラル:左ジャブと左右フック
(感想:ロラがタイトル防衛。四度目の防衛戦。挑戦者アベラル(メキシコ)はかつて大熊正二をKOしてWBC世界フライ級王座を奪った強打者。ウィルフレド・バスケスをTKOで下してこのチャンスを得た。マイアミでの一戦。1Rから左右フックで攻撃するアベラルにロラはフットワーク、ジャブ、連打で応戦する。3R、腕をぐるぐる回して勢いをアピールするロラ。4R、アベラルをロープ際に追い詰めて連打したところでレフェリーが止めた(ダウンシーンは無し)。ロラはアウトボクサーだが、右ストレートと左フックにかなり迫力があった(パンチの無いファイターもいれば、ロラのようにパンチのあるアウトボクサーもいる)。アベラルはこの試合で引退。)

ミゲル・ロラ 12R 判定 アルバート・ダビラ
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1986年)
ロラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
ダビラ:左ジャブ、右ストレート、フック
(感想:ロラがタイトル防衛。これまで29連勝(14KO)のロラ(26歳)。七度目の防衛戦はダビラとの再戦。55勝(25KO)9敗1分のダビラ(33歳)はロラとの初戦後、フランキー・デュアルテにTKO負けしたが(北米バンタム級王座戦)、後のWBA世界J・フェザー級王者ファン・ホセ・エストラーダに勝利。直前の試合は北米バンタム級王座決定戦で、3-0の勝利。カリフォルニア州イングルウッド「Great Western Forum」での一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア)。忙しくダッキングしながらジャブを連打するダビラ。ワンツー、右ストレートからの左ジャブ、ショートフック連打。ロラは相手との距離を保ちながら速いジャブを中心とするアウトボクシング。テンポ良く、長いパンチで左フックからの右ストレート、ワンツーからの左ジャブ、左ボディ打ち。軽いパンチが目立つが、斜め下からの左フックには迫力がある。試合はショートパンチのダビラよりロラの長いパンチの方が効果的に見える展開。攻めるがディフェンスされるダビラ、器用にワンツー、左フックダブルを打ち込むロラ。9Rにハプニング。ダビラの両目のキズが悪化する中、リングにタオル投入。「勝った」と思ったロラは喜ぶが、これは無関係な者が勝手に投げたタオル。試合続行。結局、最後まで前に出たダビラだが、ロラが軽快なボクシングを進めて12R終了。判定は3-0(ダウンシーンは無し)。ロラがシャープなパンチ&ディフェンスで勝利。ダビラは無骨。タフさを見せたが、全体的に地味な攻め。ディフェンスされて王座返り咲きならず。これが最後の試合に。その後のロラ。次の防衛戦の相手は長身(178cm)のメキシカン、ラウル・ペレス。ラスベガスでペレスに判定負けで王座陥落、初黒星。その後、ガビー・カニザレスと空位のWBO世界バンタム級王座を争ったが、2RでKO負け。ラファエル・デル・バーレのWBO世界バンタム級王座に挑戦したが、判定負けでまたしても同王座獲得ならず。結局、王座に返り咲くことなく、それがラストファイトに。引退後は故郷に帰ってビジネスをやったり、TV出演したりしているらしい。)

①「WBC World Bantamweight Title         
Miguel Lora vs. Wilfredo Vazquez」
②「WBC World Bantamweight Title          
Miguel Lora vs. Alberto Davila」
③「WBC World Bantamweight Title          
Miguel Lora vs. Antonio Avelar」
④「WBC World Bantamweight Title          
Miguel Lora vs. Alberto Davila」

ウィルフレド・バスケス(Wilfredo Vazquez)のページ
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アルバート・ダビラ(Alberto Dávila)のページ
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アントニオ・アベラル(Antonio Avelar)のページ
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ラウル・ペレス(Raul Perez)のページ
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ガビー・カニザレス(Gaby Canizales)のページ

2020年3月13日金曜日

アルバート・ダビラ(Alberto Dávila)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

バンタム級の強豪、ダビラ。黄哲淳戦、キコ・ベヒネス戦、エンリケ・サンチェス戦を紹介します。

アルバート・ダビラ(Alberto Dávila)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

アルバート・ダビラ(アメリカ)
身長160cm:オーソドックス(右構え)

アルバート・ダビラ 2R KO 黄哲淳
(バンタム級、1982年)
ダビラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
黄:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
2R:左フック、左フックで2度、黄がダウン
(感想:メキシコ系アメリカ人のダビラ。12歳でボクシングを始める。高校卒業後にプロ入り。後に世界王者になるルペ・ピントールに勝利、ウィルフレド・ゴメスに敗北。カルロス・サラテ、ホルヘ・ルハン、ルペ・ピントールの世界王座に挑戦して全て敗北。実力はあるが、「世界の壁」を越えられない状況。黄は韓国の選手。「BOXREC」によると試合数は少ないがこれまで全勝。大橋秀行の兄克行を破っている。世界王者になる前のダビラがロサンゼルス「オリンピック・オーディトリアム」で行った一戦。1Rから積極的に力強いジャブ、ストレートを打つ黄。ダビラはディフェンスしながらジャブ。黄の調子は良さそうだったが、2Rに左フックでダウン。さらにダウンを追加。ダウンと同時にレフェリーストップ。ダビラは地味な印象の選手だが、なかなかのハードパンチャー。リズミカルな動きが良く、拳の頑丈さを感じた。)

アルバート・ダビラ 12R KO キコ・ベヒネス
(WBC世界バンタム級王座決定戦、1983年)
ダビラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
ベヒネス:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
12R:連打でベヒネスがダウン
(感想:ダビラがタイトル獲得。ダビラが四度目の世界挑戦。ベヒネスはメキシコの新鋭。パワフルな戦いをする選手で、フリアン・ソリス(元WBA王者)、ハリケーン・テルを破っている。しかし、直前の試合ではTKO負け。コンディションが気になるところ。ロサンゼルス「オリンピック・オーディトリアム」で行われた一戦。1Rから積極的に力強いジャブを飛ばす両者。共に似たようなスタイルだが、ベヒネスは左フックのボディ打ち、ダビラは正確に当てる巧さが特徴的。一歩も引かない打撃戦が続く。12R開始早々、右ストレートを食ってグラつくベヒネス。追撃の連打でダウンしたベヒネスは立てなかった。激しい打撃戦を制したダビラ。どちらが勝ってもおかしくなかったほど激しかったバンタム級史上に残る名試合。しかし、ベヒネスはこの試合の3日後に死去。それは悲しいことではあるが、彼は「世界王者レベルの選手」としてファンの記憶に残るだろう。)

アルバート・ダビラ 11R KO エンリケ・サンチェス
(WBC世界バンタム級タイトル戦、1984年)
ダビラ:左ジャブ、右ストレート、左フック
サンチェス:左ジャブと左右フック
(ダウンシーン)
10R:右フックでサンチェスがダウン
11R:連打でサンチェスがダウン
(感想:ダビラがタイトル初防衛。サンチェスはドミニカの黒人選手。WBCの地域王座を獲得するなど、戦績は良い。マイアミで行われた一戦。1Rから積極的に力強い左右フックで攻めるサンチェス。ダビラはいつもの調子だが、サンチェスの勢いに押されているような印象。激しい試合の途中で雨が降り、リング上は水浸しに。10R終了間際の右フックでサンチェスがダウン。11Rにも再び倒れ、ダウンと同時にレフェリーストップ。ダビラの正確で丁寧なボクシングが光った一戦。しかし、屋外での試合とは言え、水たまりの中で試合続行とは珍しい。初防衛に成功したダビラだが、負傷のため王座剥奪。後、WBC王者になったミゲル・ロラに二度挑戦したが、いずれも判定負けで王座返り咲きならず、引退。引退後はトレーナーになったが辞め、別の仕事に就いたという。)

①「Bantamweight
Alberto Dávila vs. Chul Soon Hwang」
②「WBC World Bantamweight Title
Alberto Dávila vs. Kiko Bejines」
③「WBC World Bantamweight Title
Alberto Dávila vs. Enrique Sanchez」

カルロス・サラテ(Carlos Zarate)のページ
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ルペ・ピントール(Lupe Pintor)のページ 

2020年3月11日水曜日

ローランド・ナバレッテ(Rolando Navarrete)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

フィリピンのハードパンチャー、ナバレッテ。崔忠日戦、呉永世戦、文泰鎮戦(再戦)を紹介します。

ローランド・ナバレッテ(Rolando Navarrete)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ローランド・ナバレッテ(フィリピン)
身長165 cm:サウスポー

ローランド・ナバレッテ 11R KO 崔忠日
(WBC世界J・ライト級タイトル戦、1982年)
ナバレッテ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
崔:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
5R:右ストレートでナバレッテがダウン
10R:左右フックで崔がダウン
11R:右フックで崔がダウン
(感想:ナバレッテがタイトル初防衛。フィリピンの強打者ナバレッテ。アレクシス・アルゲリョが王者だったときにWBC世界J・ライト級タイトルに挑戦して敗北。二度目の挑戦でコーネリアス・ボサ・エドワーズをKOして同王座獲得。これが初防衛戦となる。崔は韓国のホープ。これまで全勝。ただし、これまで王座を獲得したことがなく、海外での試合はこれが初めて。マニラで行われた一戦。1Rから積極的に力強いジャブ、ストレートを飛ばす崔。この当時の世界戦は15R制。「スタミナがもつのか?」と思うほど連打する崔。ナバレッテはカウンターと左右フックで迎え撃つ。5R、右でグラついたナバレッテがさらに右ストレートでダウン。その後は打ち合いが続き、10R、11Rのダウンで逆転KO。激しい打撃戦はナバレッテが制した。全力で攻め続けた崔。「ナバレッテは小手先のテクニックで勝てる相手ではない」と考えていたのかも知れない。負けたが崔は世界王者クラスの実力を持っていた。)

ローランド・ナバレッテ 8R TKO 呉永世
(J・ライト級、1982年)
ナバレッテ:右ジャブ、左ストレート、右フック
呉:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
8R:左ストレートのカウンターで呉がダウン
(感想:二度目の防衛戦でバズーカ・リモンに敗れたナバレッテ。これはその再起戦。呉は元・東洋太平洋J・ライト級王者。ロイヤル小林に判定勝ちしたことがある。フィリピンで行われた試合。ナバレッテはいつものフック攻撃、呉は右ストレートで勝負。やや呉が押し気味で試合が進む。8R、フットワークを使い出したナバレッテがダウンを奪う。呉は立ったが戦意喪失。レフェリーは試合を止めた。「もうやりたくない」と相手に思わせるほどのナバレッテのパンチ力。呉はこれが最後の試合となった。)

文泰鎮 9R TKO ローランド・ナバレッテ
(J・ライト級、1990年)
ナバレッテ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
文:右ジャブ、左ストレート、左右フック
(ダウンシーン)
2R:右フックで文がダウン
9R:右フックでナバレッテがダウン
(感想:ナバレッテのキャリア終盤の試合。文泰鎮はロッキー・ロックリッジのWBA世界J・ライト級タイトルに挑戦したことがあり、呉永世に初黒星をつけた男でもある。引退していたが、長いブランク後にカムバック。これは再戦(初戦は文がKO勝利)。マニラで行われたサウスポー同士の対戦。左ストレートを武器に文が攻め、ナバレッテが迎え撃つ展開。中間距離での打ち合い。2R、右フックで文がダウン。7Rには文の左フックがヒット。最後は右フックでナバレッテがダウンし、レフェリーが止めた。先にダウンを食った文が逆転勝利。ダウン応酬で、両者ともキズのチェックを受けたほどの激戦。文は勝ったが、左目が腫れてふさがるダメージを負った。ナバレッテは世界王座陥落後は一度も世界戦のチャンスが無かったのが不思議。引退後は文無しになったり、トラブルを起こしたり。同時代にアルゲリョやバズーカ・リモンといった強豪がいたため、名勝負を残すことはできたが、世界王者としてはあまり活躍できなかったのが残念。)

①「WBC World Super Featherweight Title
Rolando Navarrete vs. Chung Il Choi」
②「Super Featherweight
Rolando Navarrete vs. Young Se Oh」
③「Super Featherweight
Rolando Navarrete vs. Tae Jin Moon」

ラファエル・リモン(Rafael "Bazooka" Limón)のページ
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コーネリアス・ボサ・エドワーズ(Cornelius Boza Edwards)のページ

コーネリアス・ボサ・エドワーズ(Cornelius Boza Edwards)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

ウガンダ出身、エドワーズ。ラファエル・リモン戦、ボビー・チャコン戦、ローランド・ナバレッテ戦を紹介します。

コーネリアス・ボサ・エドワーズ(Cornelius Boza Edwards)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

コーネリアス・ボサ・エドワーズ(ウガンダ)
身長174cm:サウスポー

コーネリアス・ボサ・エドワーズ 15R 判定 ラファエル・リモン
(WBC世界J・ライト級タイトル戦、1981年)
エドワーズ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
リモン:右ジャブ、左右フック
(ダウンシーン)
5R:左ストレートでリモンがダウン
(感想:エドワーズがタイトル獲得。ウガンダ出身で英国に住むエドワーズ。ウガンダはアミン大統領による独裁政権に支配されていた時代があったが、それを嫌って国外に出た人も多く、エドワーズもその一人らしい。プロでは好戦績。敗れはしたが、あのアレクシス・アルゲリョに善戦して注目を集める。そしてこのリモンへの挑戦。リモンは「バズーカ」と呼ばれる強打者。ただし、バッティングやローブローといった技も使うという評判。サウスポー同士の対戦。リモンはいつものようにパワーを込めたジャブ、左右フックで前進。エドワーズはよく伸びるジャブ、ストレートとコンビネーション。リモンの強打に怯むことなく打ち合うエドワーズ。5Rにはパワーの乗った左ストレートでリモンをダウンさせる。劣勢を挽回しようとするリモンと自信に満ちたエドワーズの打ち合いはかなりの迫力で、観客がスタンディング・オベーションしたほど。最後の最後まで打撃戦が続き、判定は3-0でエドワーズ。リモンも力強かったが、エドワーズがキレのあるパンチ、度胸、ディフェンスで勝った。ボクシングファンを熱くさせるのはやはり「ハードパンチャー」なのだ、ということを改めて感じた一戦。ただ、リモンは反則を多用したようで、試合後、エドワーズはリモンのことを「今までで一番ダーティな選手だった」と語ったそうだ。)

コーネリアス・ボサ・エドワーズ 14R TKO ボビー・チャコン
(WBC世界J・ライト級タイトル戦、1981年)
エドワーズ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
チャコン:左ジャブ、右ストレート、右フック
(感想:エドワーズがタイトル初防衛。チャコンはタフ男。元WBC世界フェザー級王者で、ルーベン・オリバレスといった強打者と抗争してきた。アレクシス・アルゲリョがこの王座(WBC世界J・ライト級タイトル)を持っていたときに挑戦したが敗北し、二階級制覇ならず。再度、同王座を狙う。ラスベガスで行われた一戦。エドワーズはジャブを中心に試合を展開。チャコンは右ストレートを狙うが、ディフェンスが上手いエドワーズには当たらない。エドワーズの攻めに押されるチャコン。9Rにはチャコンの右フックでエドワーズがぐらつくシーンもあったが、攻撃の正確さでエドワーズが上回る。結局、13R終了でチャコンが棄権(「ボクシングマガジン1981年7月号」によると出血と疲労が原因)。ダウンシーンは無し。チャコンは試合後に引退を表明したが、両者は後に再びタイトルを賭けて戦う。)

ローランド・ナバレッテ 5R KO コーネリアス・ボサ・エドワーズ
(WBC世界J・ライト級タイトル戦、1981年)
エドワーズ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
ナバレッテ:右ジャブ、左ストレート、左右フック
(ダウンシーン)
4R:左ストレートで2度、エドワーズがダウン
5R:右フックでエドワーズがダウン
(感想:ナバレッテがタイトル獲得。フィリピンの強打者ナバレッテとの二度目の防衛戦。ナバレッテもチャコンと同様、アルゲリョがこの王座を持っていたときに挑戦して敗北している選手。北米J・ライト級王座を獲得し、二度目のチャレンジ。イタリアで行われたサウスポー同士の対戦。レフェリーはあの有名なアーサー・マーカンテ。ジャブの打ち合いでスタート。1Rからナバレッテの左ストレートがヒット。激しく打ち合う両者。4R、5Rに計三度のダウンでKO決着。エドワーズはまるで挑戦者であるかのように前に出た。何故もっと得意のジャブでナバレッテのスタミナを奪わなかったのか? 本来ボクサータイプのエドワーズがファイターのように打ち合い過ぎたのが敗因だと思われる。その後のエドワーズはチャンスに恵まれず。ピークを過ぎてヘクター・カマチョ、ホセ・ルイス・ラミレスのWBC世界ライト級タイトルに挑戦したが敗北し、二階級制覇ならず。引退後はトレーナーに転身した。)

①「WBC World Super Featherweight Title
Rafael Limón vs. Cornelius Boza Edwards」
②「WBC World Super Featherweight Title
Cornelius Boza-Edwards vs. Bobby Chacon」
③「WBC World Super Featherweight Title
Cornelius Boza Edwards vs. Rolando Navarrete」

ラファエル・リモン(Rafael "Bazooka" Limón)のページ
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ローランド・ナバレッテ(Rolando Navarrete)のページ
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ヘクター・カマチョ(Héctor "Macho" Camacho)のページ
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ボビー・チャコン(Bobby Chacon)①のページ
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ボビー・チャコン(Bobby Chacon)②のページ
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ボビー・チャコン(Bobby Chacon)③のページ

2020年3月6日金曜日

ラファエル・リモン(Rafael "Bazooka" Limón)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

メキシコの剛腕バズーカ、リモン。イデルフォンソ・ベツレミ戦、ローランド・ナバレッテ戦、崔忠日戦を紹介します。

ラファエル・リモン(Rafael "Bazooka" Limón)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ラファエル・リモン(メキシコ)
身長166cm:サウスポー

ラファエル・リモン 15R TKO イデルフォンソ・ベツレミ
(WBC世界J・ライト級王座決定戦、1980年)
リモン:右ジャブ、左右フック
ベツレミ:左ジャブ、右ストレート、左右フック
(ダウンシーン)
15R:連打でベツレミがダウン
(感想:リモンがタイトル獲得。猛烈なファイターのリモン。その荒っぽい試合ぶりに相手側からクレームが来るほど(らしい)。陸軍時代にボクシングと演劇を始めたという(「役者」としてどんな活躍をしたのだろう?)。アレクシス・アルゲリョがこの王座(WBC世界J・ライト級王座)を持っていたときに挑戦したが、敗北。そして、この二度目の同王座へのチャレンジ。ベツレミはベネズエラの選手。WBC の地域王座(J・ライト級)を獲得し、この王座を懸けた試合でリオネル・エルナンデス(来日し、上原康恒の世界王座に挑戦した男)に勝利している。ファイター同士の対決。パワーを込めたジャブ、ストレートを打つベツレミ。リモンは慎重に相手を見る。2Rに強烈な右フックを決めたのをきっかけに打って出るリモン。顔面狙いのベツレミ。リモンはディフェンスしながら左右フックでボディを叩く。共に一歩も引かず、打ち合いが続いたが、15R、ロープ際での連打でベツレミがダウン。立ったがレフェリーストップ。ボディ攻撃とディフェンスの差でリモンが頂点に立った。ベツレミもパワーのある良い選手だが攻撃がやや一本調子だった印象。後、ベツレミはその再起戦が引き分けに終わり、それが最後の試合となった。)

ラファエル・リモン 12R KO ローランド・ナバレッテ
(WBC世界J・ライト級タイトル戦、1982年)
リモン:右ジャブ、左右フック
ナバレッテ:右ジャブ、左右フック
(ダウンシーン)
12R:左フックでナバレッテがダウン
(感想:リモンがタイトル奪回。コーネリアス・ボサ・エドワーズに敗れ、初防衛に失敗したリモン。王座はエドワーズからフィリピンの強打者ナバレッテに。ラスベガスで行われた一戦。リングアナはジミー・レノン(ジュニアではなく、親父さんの方)。共にサウスポーで似たような戦い方。1Rから激しい打撃戦。積極的なリモン、やや慎重なナバレッテ。パワーはリモンの方が上か。4Rには左ストレートを決めたナバレッテだが、リモンが振りの大きいパンチと攻める姿勢で優勢に。12R終了間際、強烈な左フックでKO。J・ライト級史上に残る壮絶な戦いとなった。)

ラファエル・リモン 7R KO 崔忠日
(WBC世界J・ライト級タイトル戦、1982年)
リモン:右ジャブ、左右フック
崔:左ジャブ、右ストレート
(ダウンシーン)
7R:左ボディ、連打で2度、崔がダウン
(感想:リモンがタイトル防衛。挑戦者の崔はボクサータイプ。戦績は悪くはないが、ローランド・ナバレッテが王者だったときにこの王座に挑戦してKO負けしている。ロサンゼルスで行われた一戦。ジャブ、ストレートで距離を取ろうとする崔。リモンは得意の左右フックで前に出る。互いに警戒し、崔の速いパンチに思うように攻められないリモン。しかし、7R、左ボディで崔がダウン。さらにダウンを追加。打たれる崔を見てレフェリーが試合を止めた。ただでさえ強烈なリモンのパンチ。それをボディに喰ったらひとたまりもない、といったところ。リモンのようなタフでパンチのある選手とは打ち合うべきではない。そういう点では崔の「距離を取る作戦」は正しかったと思うのだが。激闘を制したリモン。次の防衛戦でボビー・チャコンに敗北、王座陥落。さらに次の試合で空位となったWBC世界J・ライト級タイトルをヘクター・カマチョと争ったがKO負け。その後は力が落ちていくと同時に敗北が多くなっていく。エドワーズ、ナバレッテ、チャコンらと激闘を繰り返していたときが彼の全盛期だ。)

①「WBC World Super Featherweight Title
Rafael Limón vs. Idelphonso Bethelmy」
②「WBC World Super Featherweight Title
Rolando Navarrete vs. Rafael Limón」
③「WBC World Super Featherweight Title
Rafael Limón vs. Chung Il Choi」

コーネリアス・ボサ・エドワーズ(Cornelius Boza Edwards)のページ
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ローランド・ナバレッテ(Rolando Navarrete)のページ
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ヘクター・カマチョ(Héctor "Macho" Camacho)のページ
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ボビー・チャコン(Bobby Chacon)①のページ
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ボビー・チャコン(Bobby Chacon)②のページ
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デビー・ムーア(Davey Moore)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

「高速パンチ」のWBA世界J・ミドル級王者、ムーア。三原正戦、チャーリー・ウェイナー戦、アユブ・カルレ戦を紹介します。

デビー・ムーア(Davey Moore)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

デビー・ムーア(アメリカ)
身長178cm:オーソドックス(右構え)

デビー・ムーア 6R KO 三原正
(WBA世界J・ミドル級タイトル戦、1982年)
ムーア:左ジャブ、右ストレート、左フック
三原:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
5R:連打で三原がダウン
6R:右ストレート、連打、連打で3度、三原がダウン
(感想:ムーアがタイトル獲得。ニューヨーク・ブロンクス出身のムーア(世界フェザー級王者だったデビー・ムーアとは別人)。アマチュアで優秀な成績。モスクワオリンピックに出場予定であったが、アメリカがボイコット。プロ入り。全勝のまま(後にマイク・タイソンのトレーナーになるケビン・ルーニーを破った星も)、この世界初挑戦。優秀な選手ではあるがプロキャリアは八戦しかない。三原は日本期待の選手。ニューヨークでロッキー・フラットを破って空位だったWBA世界J・ミドル級タイトルを獲得。これが初防衛戦となる。速いジャブと回転の速い連打のムーア。当てるのが上手く、手数も多いムーアは1Rからパンチをヒットさせる。4R、両者とも激しく打ち合う。5R、連打で三原がダウン。6Rに決着。四度ダウンを奪ってムーアの圧勝。当時、試合数も少なく、世界ランク10位のムーアは三原にとって楽な相手と思われていたようだが、大変な実力者であった。TV映像で観ても速いムーアのパンチ。打たれている三原にはもっと速く感じられたのではないか?)

デビー・ムーア 5R KO チャーリー・ウェイナー
(WBA世界J・ミドル級タイトル戦、1982年)
ムーア:左ジャブ、右ストレート、左フック
ウェイナー:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
2R:左フック、右ストレートで2度、ウェイナーがダウン
3R:右ストレートでウェイナーがダウン
4R:連打で2度、ウェイナーがダウン
5R:右ストレートでウェイナーがダウン
(感想:ムーアがタイトル初防衛。ウェイナーは南アフリカの選手。南アフリカ・ミドル級タイトルを獲得するなど、戦績は悪くない。ヨハネスブルグで行われた一戦。ムーアが軽快なフットワークからジャブを飛ばす。ウェイナーもバランスの良い姿勢からジャブと伸びるストレートを打つ。互いにジャブを打ち合う展開から、パンチの回転が速いムーアがダウンを奪う。2RにKO寸前になったウェイナーは何とかクリンチでしのいだが、結局、六度のダウンで惨敗。ウェイナーは悪い選手ではなかったが、ムーアが速く、正確なパンチで圧勝。最後の右ストレートはかなり強烈な一撃だった。)

デビー・ムーア 10R TKO アユブ・カルレ
(WBA世界J・ミドル級タイトル戦、1982年)
ムーア:左ジャブ、右ストレート、左フック
カルレ:右ジャブ、左ストレート
(感想:ムーアがタイトル防衛。挑戦者はかつてこのベルトを持っていた世界ランク1位、サウスポーのカルレ(ウガンダ)。実力者ではあるが、「KOを狙うようなファイター」ではない。アトランチックシティで行われた一戦。1Rから積極的に前に出るカルレをムーアが迎え撃つ。共に手数が多く、一歩も引かない打ち合い。ムーアは右ストレート、カルレは左ストレートが印象的。10R終了間際にムーアがラッシュをかけレフェリーストップ。ダウンシーンは無し。パンチの回転の速さで勝負がついた。ボクシング界には二人の有名な「デビー・ムーア」がいる。もう一人は世界フェザー級王者だったムーア。試合中のアクシデントで死去。今回紹介したJ・ミドル級のムーアは4度目の防衛戦でロベルト・デュランにKO負け(デュランがサミングしたとの疑いあり)。その後、世界挑戦で敗北するなど、目立った活躍は無し。そして自動車事故で死去。二人のムーアは共に若くして世を去った。)

①「WBA World Super Welterweight Title
Mihara Tadashi vs. Davey Moore」
②「WBA World Super Welterweight Title
Davey Moore vs. Charlie Weir」
③「WBA World Super Welterweight Title
Davey Moore vs. Ayub Kalule」

ロベルト・デュラン(Roberto Durán)のページ

2020年3月4日水曜日

トニー・タッカー(Tony "TNT" Tucker)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

IBFで世界を獲った長身のヘビー級、タッカー。チャック・ガードナー戦、ジェームス・ダグラス戦、キムエル・オドム戦を紹介します。

トニー・タッカー(Tony "TNT" Tucker)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

トニー・タッカー(アメリカ)
身長196cm:オーソドックス(右構え)

トニー・タッカー 3R TKO チャック・ガードナー
(ヘビー級、1980年)
タッカー:左ジャブ、右ストレート、左フック
ガードナー:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
2R:左フックでガードナーがダウン
3R:右ストレートでガードナーがダウン
(感想:ミシガン州出身のタッカー。スラリとした長身選手。アマチュアボクサーだった父から戦い方を習い、アマで優秀な成績。モスクワオリンピック(1980年)に出場予定だったが、アメリカがオリンピックをボイコットしたため、プロへ。「Tomorrow's Champions(明日の王者たち)」の一人として売り出されることになり、このプロデビュー戦。ガードナーは中堅どころの選手。丁寧にジャブを使うタッカー。2Rには右ストレートからの左フックでダウンを奪う。3Rにダウンを追加。ガードナーは立ったがストップされた。タッカーはパワーがあり、当てるのも巧かった印象。ガードナーは後、負けてはいるがトレバー・バービック、ジョン・テート、アーニー・シェイバーズ、フランク・ブルーノといった名のある選手と戦った。)

トニー・タッカー 10R TKO ジェームス・ダグラス
(IBF 世界ヘビー級王座決定戦、1987年)
タッカー:左ジャブ、右ストレート、左フック
ダグラス:左ジャブと右ストレート
(感想:タッカーがタイトル獲得。連勝を続けるタッカー。全米ヘビー級王座を獲得するなど、これまで無敗。世界初挑戦。ダグラスは父がミドル級の世界ランカーだった選手。親が獲れなかった世界王座を息子が獲得できるかどうか、といったところ。ラスベガスで行われた一戦。「マイク・タイソン vs. ピンクロン・トーマス」戦の前座カード。共にジャブを中心に試合を展開する選手ということもあり、キレのあるジャブの応酬が続く。5Rには左フックでタッカーがグラつくなど、ダグラスが積極的にジャブ・ストレートを飛ばす。しかし、10Rにタッカーが一気に前に出る。ストレートを連打し、ダグラスが打たれっぱなしになったところでレフェリーストップ。ダウンシーンは無し。当時、この試合は「凡戦」「退屈な試合(ダルファイト)」などと言われた。しかし、両選手ともボクサータイプであり、キレのあるジャブの交換に見応えがあったと個人的には評価している。)

トニー・タッカー 2R TKO キムエル・オドム
(ヘビー級、1992年)
タッカー:左ジャブ、右ストレート、左フック
オドム:左ジャブ
(ダウンシーン)
2R:左フック、連打で2度、オドムがダウン
(感想:ダグラスに勝って世界王者になったタッカーだが、その次の試合でマイク・タイソンに敗北。どうやらタッカーは食い物にされていたらしく、ややこしい契約のため、タイソン戦後に無駄にブランクを作ってしまった。そして、復帰。スリムだった身体が丸っこい感じになり、ロックミュージシャンぽかった髪が短く刈られ、キレのあったパンチが重そうな感じになってしまった。オドムは二線級(三線級?)の選手。そこそこの相手には勝ってきたが、レイ・マーサー、ドノバン・ラドック、ジェームス・スミスといったトップクラスには敗北。ラスベガス「ミラージュ」で行われた一戦。1Rから攻めるタッカー。2Rに二度ダウンを奪う。二度目のダウンでレフェリーは試合を止めた。結果は妥当なところ。しかし、タイソン戦後にブランクを作ってしまったのがもったいなかった。その後も「元世界王者」ということで何度も世界戦のチャンスをもらったタッカーだが、若い選手たちに敗北。タイソン戦前のスリムなタッカーなら勝てたであろう相手に負けるのを見るのは残念だった。)

①「Heavyweight
Tony Tucker vs. Chuck Gardner」
②「IBF World Heavyweight Title
Tony Tucker vs. Buster Douglas」
③「Heavyweight
Tony Tucker vs. Kimmuel Odum」

ジェームス・ダグラス(James "Buster" Douglas)のページ

ジェームス・スミス(James "Bonecrusher" Smith)「世界の強豪ボクサー:ボクシング・ブログ」

WBA世界ヘビー級王者・特集⑧。恐怖のハードパンチャー、ジェームス・ボーンクラッシャー・スミス。フランク・ブルーノ戦、マイク・ウィーバー戦、ティム・ウィザスプーン戦(再戦)を紹介します。

ジェームス・スミス(James "Bonecrusher" Smith)ボクシング・ブログ「世界の強豪ボクサー」[Google Blogger]

ジェームス・スミス(アメリカ)
身長193cm:オーソドックス(右構え)

ジェームス・スミス 10R KO フランク・ブルーノ
(ヘビー級、1984年)
スミス:左ジャブと左右フック
ブルーノ:左ジャブ、右ストレート、左フック
(ダウンシーン)
10R:左フックでブルーノがダウン
(感想:ノースカロライナ州出身のスミス。「Bonecrusher(骨砕き屋)」などという恐ろしいニックネームを持つ強打者だが、大学出のインテリ。陸軍に入隊。その後は刑務所の看守に。アマチュアでリングに上がり、その後プロへ。28歳で遅いプロデビュー。デビュー戦で敗北してしまったが(相手は巨漢ジェームス・ブロード)、その後、連勝中。ブルーノは「英国のハナ肇」。強打でKOの山を築き、これまで全勝のホープ。ロンドン「ウェンブリーアリーナ」で行われた一戦。互いにジャブを飛ばす展開。ブルーノは上半身が固く、ぎこちない印象。「ボーンクラッシャー」スミスはパワーを込めて圧力をかける。もみ合うようなシーンも多かったが、10R、左フックでグラついたブルーノに強烈な左フック。スミスが豪快なKO勝ち。後に世界王者になる二人の名勝負。フィニッシングブローは「(ダウンから)絶対に立てないだろう」と思うぐらいの凄まじいパンチだった。)

ジェームス・スミス 1R TKO マイク・ウィーバー
(ヘビー級、1986年)
スミス:左ジャブと左右フック
ウィーバー:左ジャブと右フック
(ダウンシーン)
1R:連打でウィーバーがダウン
(感想:ブルーノ戦の次の試合でラリー・ホームズのIBF世界ヘビー級タイトルに挑戦してTKO負けしたスミス。さらにトニー・タッブス、ティム・ウィザスプーン、マービス・フレージャーに破れ、勢いに欠ける状況。ウィーバーは「ヘラクレス」と呼ばれる鍛えられた体の持ち主で、元WBA王者。共にパワーはあるが、試合運びに難がある。1R、スミスの右フックがヒット。ラッシュをかけてダウンを奪う。ウィーバーは立ったが、レフェリーは試合を止めた。ただ「ドカドカ」っと打たれただけで何もできなかったウィーバー。彼が世界チャンピオンだったのは遠い昔のこと。この結果は仕方がないのかも。この後スミスはジェシー・ファーガソン、デビッド・ベイに連勝して、ウィザスプーンとのWBA王座を懸けた再戦を迎える。)

ジェームス・スミス 1R KO ティム・ウィザスプーン
(WBA世界ヘビー級タイトル戦、1986年)
スミス:左右フック
ウィザスプーン:左右フック
(ダウンシーン)
1R:左フック、右フック、右フックで3度、ウィザスプーンがダウン
(感想:スミスがタイトル獲得。ウィザスプーンは「テリブル」と呼ばれる強打者(モハメド・アリが彼とスパーリングしたときにその強さから、そう名付けたらしい)。WBC王者になったが初防衛に失敗。トニー・タッブスを下してWBA王座獲得。初防衛戦でフランク・ブルーノをKO。これが二度目の防衛戦。勝つのは「ボーンクラッシャー」か「テリブル」か? ニューヨーク「マジソン・スクエア・ガーデン」で行われた一戦。スミスがまるで1RでのKOを狙うかのようないきなりのラッシュ。右フックでダウン寸前になったウィザスプーンに得意の右フックを連発。打ち方は粗いが、当たればスゴイのがスミス。一気に倒し切った。さすがボーンクラッシャー、といったところ。マユ毛が「ハ」の形のウィザスプーンはKOで勝つときはスゴイが、負けるときはサッパリなところがある。出来不出来の差があるのがウィザスプーンの特徴。今回の王座も長く守れなかった。この次の試合でスミスはあのマイク・タイソンに敗れ、王座陥落。しかし、デビューが遅かったというのもあってその後も長く戦い続けた(ヘビー級は軽量級と違ってノンタイトル戦でもファイトマネーが高いことが多い)。マイケル・モーラーらと戦い、ラストファイトは1999年、ラリー・ホームズとの再戦。スミスはタイソン戦でクリンチ連発の試合をやってしまったため、評価が低めの王者であるが、本来ならタイソンにも負けないほどのゴツい身体と凄まじい腕力の持ち主だった。)

①「Heavyweight
James Smith vs. Frank Bruno」
②「Heavyweight
James Smith vs. Mike Weaver」
③「WBA World Heavyweight Title
Tim Witherspoon vs. James Smith」

フランク・ブルーノ(Frank Bruno)のページ
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マイク・ウィーバー(Mike "Hercules" Weaver)のページ
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ティム・ウィザスプーン("Terrible" Tim Witherspoon)のページ